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第九回 書体を選ぶ 和文書体を見分ける その2 | 文字の手帖 | 株式会社モリサワ

かたちによる分類

 欧文の場合はセリフによってかたちを規定していましたが、和文にはそういうこだわりのエレメントはありません。明朝体のウロコにも規範となるような強さは見受けられません。あえて何か基準を探すなら「筆づかい」だろうと考えています。運筆や筆勢がしっかり残っているかどうか、または、それをどの程度(どのように)抽象化しているのか、そういったことがかたちを分類する上で有効な基準になるように思います。明朝体の仮名が漢字と違う楷書のような特徴を持っているように、また、漫画書体の仮名がアンチック体であるように、筆書系の書体は思っている以上に使われています。そういった観点から今あるデジタル書体を分類してみたものが左ページのマップです。
 並べてみると、筆の痕跡とかたちの相関など、これまで考えてこなかったことに改めて気づかされます。やはり分類の基準をひとつに定めることは、体系的に理解する上で重要なことなのでしょう。

用途による分類

 最後に用途による分類です。和文活字は見出し用、本文用でタイプフェイスのデザインが異なります。先述の通りファミリー化によって区別がなくなったようにも思えますが、やはり、このふたつは分けて考えていいでしょう。同様に、書籍用と雑誌・パンフレット用も分けて考えることができます。
 あとは、欧文と同じディスプレイ書体、デコラティブ(装飾)書体という分類。欧文と違うのは、用途別の専用書体が少ないこと。新聞書体と教科書体ぐらいでしょうか。これは、文字数の多さに起因するものと思われます。
 前述のスクリーン表示兼用書体は、容量が軽いことに最大の特徴があり、そのため、文字数の制限はもとより、これまで成されてきた視覚調整すら省いている書体も見受けられます。しかし、本文程度のサイズではそれで見苦しいわけではなく、視覚調整の常識を疑った方がいいと思えるぐらいです。
 UDフォントとはユニバーサルデザインのための文字のことです。バリアフリーであることを第一義とし、視力に障害や衰えがある人にも見誤りのないように、開口部をアキを広げたり、濁点、半濁点を大きくするなどの工夫が施されています。また、文字を直観的に見やすいように、手書きのかたちに近づけるようにかたちを変えてもいます。
 いくつかあるUDフォントに共通の特色がどれくらいあるのか、そしてそれがどれほど有効であるのかは今後の検証を待たねばならないのですが、用途による分類のひとつに数えても問題ないでしょう。

近代活字以降の和文書体は、まだ歴史が浅いせいもあって、これまで積極的に整理・分類されることはありませんでした。文字数もさることながら、漢字、2種類の仮名、ラテンアルファベット、ローマ数字、アラビア数字と、さまざまな文字を組み合わせて使う日本語の文字表現の特性を考えると、体系的に把握することの困難さもあると思われます。逆に文字に対する自由度が損なわれるという考えもあるかも知れません。しかし、印刷書体が2000種を超え、これからオンスクリーンの表示書体と地続きになろうというところで、なんらかの書体の見分け方を手に入れなければ、書体選択もおぼつかなくなるような気がします。私は、欧文書体は「知ること」、和文書体は「考えること」で、書体選択の指標が手
にはいると考えています。

モリサワ書体におけるかたち(筆づかい)による分類マップ

[モリサワ書体におけるかたち(筆づかい)による分類マップ]
上下は筆の痕跡、左右はかたちの抽象度で分布した。左ほど手書きのかたちが残っている。距離は等歩度であることを心がけたが、うまくいっているのかどうかわからない。あくまで試案としてご勘弁いただきたい。

UDフォントの特徴

[UDフォントの特徴]

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