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NPO法人eboard様

「学びをあきらめない社会」の
実現を目指して

ICT教材eboardの開発・運営

NPO法人eboard様
  • NPO法人eboard
    代表理事

    中村孝一氏

NPO法人eboard(以下、eboard)は「学びをあきらめない社会」というミッションの実現に向けて活動する団体です。塾に通えない、授業についていけない、学校に行けないなど、さまざまな理由から「学びをあきらめてしまっている」子どもたちがいます。たとえ、どんな環境にあっても、子どもたちが「学んでみよう」と思ったとき、子どもたちの学びを「支えたい」と思ったとき、「いつでも、どこでも」それが実現できる。そんな「学びをあきらめない社会」の実現を目指して活動しています。

NPO法人eboard 代表理事
中村孝一氏

2023年には、「第2回 SDGsジャパンスカラシップ岩佐賞(SDGs岩佐賞)」(主催:公益財団法人岩佐教育文化財団)を受賞。その活動が社会的に高く評価されるなか、代表理事の中村孝一氏に、毎月の利用者が20万人を超えるICT教材eboardに「UDデジタル教科書体」(TypeSquare)を採用したお話をお伺いしました。

NPO法人eboardについて

私たちは「学びをあきらめない社会」をミッションに掲げて活動しているNPOです。教育分野のNPOというと、学校・教育現場での活動をされている団体が多いですが、私たちは、2013年の設立時から10年以上に渡って、インターネットを通じて、経済的理由や不登校、障害などの事情で学びにアクセスしづらい、つまずきを抱えている子どもたちに、学習機会を提供しています。

具体的には、約2,000本の映像授業と約10,000問のデジタルドリルで構成されたICT教材eboardを開発・運営しています。この教材は全国の公立学校や学習支援団体、フリースクール、地方の公営塾など全国10,000カ所以上の教育現場で導入されていて、毎月20~30万人の方々に利用されています。

ICT教材eboardは、2014年 第11回 日本e-Learning大賞 文部科学大臣賞を受賞

課題

ICT教材eboardは、公立学校・非営利活動、ご家庭での利用には無料で提供しています。以前はご家庭での利用も多かったですが、1人1台の端末が整備された2021年以降は、全国の公立学校で、普段の授業の中で使ってもらうということが一番多いです。

コロナ禍の影響も大きくあり、文部科学省や全国の教育委員会から学校にご紹介いただき、全国一斉休校になった2020年の3〜5月には、100万人以上の方に学びを届けることができました。

ただ、コロナ禍以降、利用者が広がる中で、私たちは改めて、障害や言語、さまざまな障壁から学びにアクセスできない子どもたちの存在を大きな課題として認識することになりました。2022および2023年度の個人アカウント申請理由(複数回答)の中では、「障害や特性等から、学習に困難がある」と回答した人が4割近くいたのです。

学習障害をはじめとした発達障害を抱えている子や、診断はなくても、発達の遅れや特性の凸凹から、通常の授業や紙での学習だと学びづらい子が多いです。中でも割合として多いのが、読み書きに困難を抱えるディスレクシアの子どもたちです。日本では、ディスレクシアに関する調査が十分に行われてはいないのですが、全人口の5〜10%がディスレクシアとも言われています。そのまま計算すれば、35人のクラスに2〜3人程度はいる計算になります。

学校生活や学習面では、教科書の音読が難しい、板書が追いつかない、などの困難を感じることが多いようです。また、それにより周囲にやる気がないと誤解されたりする、本人の意欲の低下が起きるなどの深刻な二次障害が起こりがちなところも大きな問題です。

学校・団体利用アカウントでの「UDデジタル教科書体」導入

UDフォントの存在は以前から見聞きしていて、学校・教育現場の先生から、UDフォントを選べるようにしてほしい、という声をもらうこともありました。そんな中で、2023年にモリサワの方からUDフォント開発の経緯やお話を伺ったのですが、私たちにとって決め手になったのは、「UDデジタル教科書体」がディスレクシア、ロービジョン(弱視)などに配慮しているところです。

 

読みに困難を抱える子は、一般的な教科書体や明朝体の形状や線の強弱などにストレスを感じたり、手書きの文字との違いに戸惑ったりすることがあります。「UDデジタル教科書体」は、そうしたフォントの欠点をカバーし、書き方の方向や点・ハライの形状を保ちながらも、太さの強弱を抑え、読みやすさを重視したフォントになっています。書体の選択肢を増やすことにより、学習に取り組みやすくなる子どもたちがひとりでも増えることを願って、学校・団体としての利用アカウント向けに導入しました。

 

導入後、現場の先生からは「導入してくれて本当にありがたい」という声とともに、「選択できることがいい」というのをよく聞きます。フォントに限ったことではないですが、子どもたちにとって選択肢があること、先生方がそれを子どもたちに提示できることがやはり大切なんだなと感じました。

ICT教材eboardの広がりについて

最近のニュースとしては、デジタル庁が運営するオウンドメディア「デジタル庁ニュース」の動画内で、子どもたちがICT教材eboardを使用する様子が紹介されました。

鹿児島市にある鹿児島市立八幡小学校の様子が紹介され、「自由進度学習」と呼ばれる授業の中で子どもたちがICT教材eboardを使用しています。

「自由進度学習」は、子どもたちが一人一台のタブレット端末を使い、教科書に加えて複数のICT教材から自分に合ったデジタルドリルを選択し、それぞれのペースに合わせて「自分らしく学習」しています。

デジタル庁ニュース「誰もが自分らしく学べる社会へ 教育DX」(2025年1月)

今後モリサワやフォントに期待すること

UDフォントの存在も大事なのですが、それが開発され世に出たことで、「フォントによって、読みやすさが変わる」「読みやすくなる子がいる」という事実が広まったことは、本当に大きなことだと思っています。モリサワさんでは、「見やすさ」「読みやすさ」の実現のために、フォントの話だけにとどまらず、フォントの選び方、文字サイズの設定、文章の行間やスペースの取り方など、「伝わる」制作物の作成方法を広める活動もされています。フォントによって読みやすくなる子もいれば、そうでない子もいる。紙の材質や印刷の仕方などで、読みやすさが変わる子もいます。

今後も、フォントにとどまらず、子どもたちが感じる読みづらさや学びづらさ、そしてその解消に向けた取り組みを、どんどん進めていってもらいたいです。それは、私たちのミッションである「学びをあきらめない社会」につながるもの。一緒にそんな取り組みができると嬉しいですね。