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学校法人 黄柳野学園黄柳野高等学校 様

学校法人 黄柳野学園黄柳野高等学校 様
  • 黄柳野高校 校長先生

    田村 尚

  • 黄柳野高校 教頭先生

    小林 栄樹

  • 黄柳野高校 教諭

    北田 侑久

学校法人黄柳野(つげの)学園黄柳野高等学校は、愛知県新城市の豊かな自然に囲まれた全寮制全日制普通科の高等学校です。入学する生徒の約7割が不登校経験者であり、さまざまな理由で学習が困難になった学生達の教育支援に力を入れています。

黄柳野高校の田村尚校長先生、小林栄樹教頭先生、北田侑久先生の3名にお話を伺いました。

黄柳野高校はどんな学校ですか

小林先生:全寮制というのが大きな特徴ですが、なかなか学校に行けなかったり、学校という場所に息苦しさを感じていた子どもたちが集まって、みんなで高校生活を送る学校です。従来の学校と比べるとすごく自由で、新しいことにもいろいろチャレンジできる学校だと思います。

 

北田先生:公式を使って問題を解くのとは逆で、学んだ結果からやり方を理解する機会が多い学校です。夏休み前に「グレートアース地球体感チャレンジ」の授業で豊川の源流を登ったり、河口でハマグリをとって食べたりしました。源流付近はとても水質が良いのですが、良すぎてハマグリの餌となる植物プランクトンや有機物があまりいません。「源流の水が土に染み込んで、いろいろなものが混ざって流れてきた河口だからこのハマグリは住めるんだ。源流では育たないよね」と話しました。授業で「有機物・無機物を覚えましょう」と聞くだけではよく分からないけど、実際に見て体験することで生徒が自分で考え始めて、学びへ繋がることが多いです。なので普通の学校と順番が逆だなと思います。

田村先生:子どもたちが興味・関心を持つにはどうしたらいいかを考えて、カリキュラムを大きく変更したことも特徴だと思います。今までは嫌いな授業もやらなければいけなかったのですが、学年に関係なく選べる「選択授業」を取り入れて、好きな授業を選べるようにしました。自分が関心のある授業を選ぶので、生徒も意欲を持って一生懸命やってくれていることがよく分かります。生徒が「学んでみたいな」という気持ちにならないと発展していかないので、その子自身がいろいろ体験して自分の関心があることを見つけられる学校だと思います。

また171名(2023年7月現在)いる全校生徒に対して、4名のスクールカウンセラーの先生が来てくださっていて、生徒の状況に合わせてカウンセラーがつくというのも大きな特徴です。カウンセラーと行う面談の時間も授業の時間として出席にカウントされますし、授業のこと・寮生活のことを気軽に話すことができる場になっているんですよ。他校にはなかなかない仕組みだと思います。

 

北田先生:生徒は気軽に相談に行きますし、あと他の学校では校長室に生徒はあまり来ないと思いますが、ここでは普通に喋りに来るし、校長先生のことも田村さんとか尚(たかし)さんって呼ぶんですよ(笑)

 

田村先生:校長室にも事務室にも生徒はよく来ますね。
多くの学校では、自分の担当者は担任の先生しかいなくて、その担任の先生と合わなかったらもう不登校になってしまうってケースが多いと思いますが、黄柳野高校では昼間は担任がいて、カウンセラーの先生もいる、食堂のおばちゃんたちとも話すし、寮には寮務さんもいる。いろいろな大人が生徒を見ていて、全体で生徒と関わってるんですよね。だから面白い学校だと思いますよ。

黄柳野高校がSDGsの取り組みを始めたきっかけを教えてください

小林先生:本校を卒業した生徒が、卒業後新しい環境でやっていけるかな…と考えたところから始まったんです。じゃあ本校にいるうちに社会と繋がりを持たせようと、興味関心のあることでスキルアップを目指して、「学校設定科目」「プロジェクトT」という授業を作っていろいろなことに取り組んでいました。子どもたちの食いつきも良く、新しい学びが生まれていきました。

その後、高等学校学習指導要領で総合的な探究の時間に力を入れましょうとなったこともあって、カリキュラムを変更して履修単位数を最低限の74単位に、週2時間だった「プロジェクトT」を総合的な探究の時間として週4時間に拡大しました。でもそれぞれのやりたい事だけを目指すとバラバラになってしまうので、何か一つ共通の目的も持ちましょう、ということでSDGsがテーマの取り組みを始めました。

生徒はSDGsだからというよりは、自分のやりたいことができることを喜んでましたね(笑)どの教科より一生懸命やっている気がします。

プロジェクトTではどんな授業をされていますか

小林先生:今年度は「グレートアース」「MA.ATHLISS」「6次産業と経営」「福祉と平和」「アートと情報発信」の5つのチームに分かれて展開しています。私の担当する「6次産業と経営」の授業では、畜産と農業を行っています。生き物と触れ合うことでいろいろなことが学べる、というきっかけから始まって、いま鶏を約200羽飼育しています。採れた卵は道の駅や直売所で販売していて、平飼いの有精卵がお手頃な価格で買えると好評ですぐ完売するんですよ。生徒と担当職員で鶏舎の掃除をしたり餌を作ったり…餌も合成飼料を使わずに、精米所に取りに行った糠を発酵させたものをメインに使っています。そして鶏糞を隣にある畑の肥料として使い、野菜も作っています。できた野菜は学校の食堂で生徒たちの食事になって、食堂の残飯は鶏達の餌になって…というサイクルが回るように意識して取り組んでいます。

北田先生:「福祉と平和」という授業では、三河湾でゴミ拾いをして、海洋ごみでネックレスとかフォトフレームを作るアップサイクルの授業もやりました。

 

小林先生:作った作品は、朝ドラのロケ地として使用された旧門谷小学校で環境映画の上映をした時に来場者へ配ったりしました。そんな感じでいろいろな授業をやってますがSDGsはきっかけの一つで、生徒の学習になる選択肢を増やそうとした結果、それがSDGsに繋がったという感じです。

MORISAWA BIZ+の導入のきっかけを教えてください

小林先生:10年くらい前は、生徒たちが昼間も寮にこもってなかなか授業に出てくれないことが課題になっていたんです。そこで、職員で検討した結果、昼間は寮を施錠して、生徒はみんな校舎棟に来てもらうことに決まりました。でもルールを変えたからといって全員が授業に出席できるわけではなく、なかなか落ち着かなかった時期もありました。そういう転換期を迎えたことが一つ。

そして本校に入学してくる生徒は不登校経験者が多いんです。なんで不登校になったのかというと、発達障害など多様な特性を抱えている子が多くて。じゃあそういう子たちが入学してきているって分かっているのに、普通に授業をやるのはどうなんだろう?ということで、ユニバーサルデザインについてみんなで勉強をしたことがあったんです。

いまは、子どもたちの気が散らないように教室の黒板周りにはあまり掲示物を貼らないとか、黒板付近に動くものを置かないように時計を移動させたりして、工夫してやっています。それと一緒で、プリントの文字や紙の色が原因で文字が読みづらい子もいるんじゃないかなって思っていたんです。

それで北田さんにも相談したら、「明朝体の文字は読みにくいです」と話していて、じゃあ文字も変えたらどうだろうと思って、提案をしたのがきっかけです。

MORISAWA BIZ+を導入いただいて実感された効果などがありましたら教えてください

北田先生:明朝体ってボコボコしていて読みづらいなぁって思っていて、他の先生がUDフォントを使って作られた資料を見た時、その資料は前より見やすくなったなと思いました。

 

田村先生:最近はペーパーレス化が進んでいますが、紙でもデータでも、今までのフォントより読みやすいです。

 

小林先生:生徒相手に検証をしたわけではないから導入前後の生徒の感想はわからないですけど、職員のPCにUDフォントが入ってみんな使うようになったら、職員の作る書類とかお便りなどが格段に読みやすくなったと思います。

 

・他社様導入事例はこちら

文字に対してどんな課題を抱えた生徒さんがいますか?

北田先生:漢字が不思議な形に見えると言ってた子がいて、「大須」の「須」の字は、斜め線がたくさん入って、しましまの柄に見えると言っていました。他にも黒板を書き写すのが苦手で、黒板を見た後ノートに書こうとしたらもう忘れちゃって、イライラし始める子もいますね。僕の書いたノートをコピーして渡して、書き写すときの目線の移動が少なくなるように配慮しています。

 

小林先生:今年から情報処理室にモニターも付けましたよね。

北田先生:あぁそうですね。情報処理の授業で使う生徒のPCデスクに、もう一つモニターを追加設置しました。今までは黒板を使ったりプロジェクターで投影しながら授業をしていたんですが、二つ目のPCモニターに僕の操作しているPC画面を映すことで、見比べる時の視線移動を少なくしました。

でも生徒たちって、自信がついてくるとできるようになるんですよね。僕も学生の時は漢字が嫌いで、どこが繋がっててどこがくっついてるのかよく分からなくて書けなかったんですよ。でも今では気にせず書けるようになリました。その子ができるところをちゃんと見てあげて、本人も学習面で自信がつけばだんだん気にならなくなっていって変わっていくと思います。

田村先生:今の話を聞いていて思い出しましたが、過去の卒業生で、字はひらがなばっかり使うし、ちょっと言われたらすぐ泣いちゃうような子がいたんですよ。でもその子が薬害エイズのことにすごく関心を持って、薬害エイズ事件の当事者であるゲストを招待して、新城文化会館で講演会を開催したんです。その講演会をやるためにはチラシを作らないといけないし、文章もたくさん書かないといけないしで、準備を進めていくうちにだんだん漢字を書けるようになって、最後にはみんなの前に立って話をすることができるようになったんです。

いろいろな原因で文字が書けない子もいるから、そこへ到達するのはなかなか難しいんですけど、何か一つ興味・関心を持てるものがあれば変わっていく、という姿を見てきたので、生徒には自信を持って取り組めるものを見つけてほしいですね。

今後モリサワに期待することはありますか

田村先生:前にモリサワさんが開催した『ユニバーサルデザインとUDフォントの活用法と伝わる文章作り講座』の研修を受けた時は、ああこんなことがあるんだなといろいろな発見がありました。

こういう文字についての研修をもっとしていただいて、文字についてもっと深く知ることができたらいいなと思います。

小林先生:この間の研修以降、先生方はちょっと変わってきましたよ。配られた資料見ると、「あれ?みんな『伝わる文書づくり』を意識してるのかな」と感じることがあります。

僕もこの前の研修のような、どうすればうまく伝えられるかの研修をもっと受けて力を付けたいと思います。文字に限らずなんですけど、どの先生も、生徒に対しては意識して授業をやっていると思うんです。でも、自分と同じ職員を相手にする時、職員会議の資料とかすごい情報量が多いので、どうやったらうまく伝わるか、どういう構成にしたらちゃんと伝えることができるか、どういう色使いをしたらいいのか?とか、そういうことも勉強したいです。今後もモリサワさんからのフォントの使い方・ユニバーサルデザインについての情報発信に期待しています。