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フェルマータ合同会社 様

「ITやデザインの力で誰もが
活躍できる社会を作ること」
を理念に

フェルマータ合同会社 様
  • 代表者

    寺戸 慎也氏
    森本 貴大氏

フェルマータ合同会社は「ITやデザインの力で誰もが活躍できる社会を作ること」を理念に活動する会社です。発達障害当事者の職場環境を改善するアプリケーション「コンダクター」を開発しています。その他、大学やNPO、企業向けのWeb制作、サイトやシステム保守、IT全般に関する相談を受ける「ITサポート事業」を行なっています。社名の“フェルマータ”は音を伸ばす音楽記号からきており、「ITを掛け合わせて可能性を伸ばす」という意味が込められています。

代表の寺戸 慎也氏(左)と、日々「コンダクター」をブラッシュアップしながら、普段はフルスタックエンジニアとして働く、共同代表の森本 貴大氏(右)

2021年4月にフェルマータ合同会社を設立。WEBシステム・WEBサイト制作のほかに、発達障害者を含む就労支援の相談員としての顔をもつ、同社代表の寺戸慎也氏に会社の事業とフォント採用の経緯についてお話を伺いました。

フェルマータ合同会社について

寺戸氏:私たちフェルマータ合同会社は、ハッタツソン2019という発達障害当事者に関する課題を解決するためのハッカソンイベントで生まれたアイデアが基となり、立ち上げた会社です。私たちフェルマータの原点です。現在、共同代表を務める森本をはじめ発達障害当事者やエンジニア、デザイナーがチームとなって意見を出し合い、タスク管理アプリ「コンダクター」の企画を考案しました。更に検討を重ねて、クラウドファンディングを成功させるなど、約3年の歳月をかけリリースできたのが「コンダクター」です。

  • ※ハッタツソンとは、「ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくる」を目標に感覚過敏や見えづらい違いなど、多様な認知特性を持つ人々が共に創り上げるイベントです。当事者の方や、当事者とかかわりのある人には、必要な情報や選択肢に触れられる場であり、また企業にとっても様々な目線で情報が発信・共有できる、新たなヒントを得る場にもなっています。
  • ※ハッカソンとは「ハック(hack)」と「マラソン(marathon)」を掛け合わせた造語で、限られた短い期間で、エンジニアやデザイナー、プランナーなどからなるチームを編成し、企画開発を競い合うイベントです。

タスク管理アプリ「コンダクター」とは

発達障害の特性によっては、働くなかで「曖昧な指示がわかりにくい」「時間管理が難しい」など、仕事上の問題が起きることがあります。

タスク管理アプリ「コンダクター」は「1日のタスク(やるべきこと)をタイムラインで表示して見通しを立てやすくする」アプリケーションです。仕事の終了条件を設定することで達成感を得られる機能もあります。

 

寺戸氏:学校での学習とは異なり、仕事になると、自身で優先度を考えて組み立てることや、明確な正解がない場合が多いです。そのため、学生時代は成績優秀な方でも、働く環境によっては特性との不一致を起こし、社会に出てからご自身の特性に気がつく方や、発達障害の診断はされなくとも、いわゆる「グレーゾーン」で、困りごとを抱える方もいらっしゃいます。

特性や困りごとは様々ですが、長年現場に携わってきた経験から、この「コンダクター」は代表的な発達障害であるADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の方が使いやすいように工夫しました。

【ADHDとASDに共通した主な特性】

 ①注意力の運用

 ②情報の判断

 ③時間的展望の持ちづらさ など

双方が持つこれらを合わせた実行機能(課題を段取りよくこなすことができる能力)にアプローチすることで職場環境や働きにくさの改善を目指しています。

「コンダクター」のタスク管理機能によって、働く人が「今、自分が何に集中すべきか」の把握を視覚的にわかりやすくすることで、業務遂行を支援したいと考えています。

「生活全体」を大切にしてほしい

寺戸氏:仕事だけでなく、プライベートも含めて一元管理できるようにしたことも「コンダクター」の特徴です。ハッタツソン2019の時もチーム内で様々な意見がありましたが、「生活全体」を大切にしてほしいという思いから議論の末に実装しました。

ユーザー層は子どもから大人まで幅広く、グループホームや生活支援を受ける方々にもご利用いただけるのではないかと思います。

私自身も「コンダクター」を利用し、訪問先や事務所への移動を含めたスケジュールの調整や、タスクの管理に役立てています。エネルギーが溢れて注意力が散漫しやすい特性がありますが、タスク管理をすることで冷静に物事を進めることができます。

アプリ開発の目的とマッチした、UDフォントの採用はマスト

寺戸氏:まずは読みやすいかどうか=可読性・視認性が最重要だと思っています。その上でデザイン性もついてくるのが理想です。UDフォントは多くの方に読みやすく分かりやすいデザインを目指して設計している点が、「コンダクター」の開発の目的とマッチしていると思い、予算と時間をかけてでも、絶対に採用したいと強く思いました。

どのフォントで、どのウエイト(太さ、黒み)が適しているのか、様々なパターンや端末で何度もテストした結果、今回はUD新丸ゴとTBUDゴシックの2書体を採用しました。

ハッタツソンフェス2024のモリサワの出展ブースでUDフォントを知り、その後画面表示のテストなど調整を進め、ハッタツソンフェス2025でようやくアプリのリリースを発表することができました。時間はかかりましたが、やはりこだわってよかったです。

モリサワ:今回採用いただいた2書体は、丸ゴシック体独特のやさしいイメージを大切にした「UD新丸ゴ」と、すっきりと読みやすくデザインバランスが両立された「TBUDゴシック」です。どちらもUD(ユニバーサルデザイン)フォントのゴシック体です。UDフォントは多くの方が誤読しづらいデザインを目指しており、近年ではゲームの画面や自治体の広報紙などユニバーサルデザインに配慮した媒体で採用いただくケースが多い書体です。

かつての「眼鏡」がそうだったように、テクノロジーは環境を変え、障害を無くすことができる

寺戸氏:障害があっても誰もが可能性を発揮し、働くことができる環境を作ることが目標です。

現在、フェルマータは法人化していますが、元々は任意団体でメンバーそれぞれに本業があったため、牛歩のような歩みでしたが、決して止まる事なく開発を進め、資金集めのクラウドファンディングなども実施しました。
2021年4月のβ版のリリース後、ハッカソンからのグループは一度解散し、さらに開発を進めるための資金調達を目的に、私寺戸とエンジニアの森本が共同代表となり覚悟をもって法人化し、本格的なスタートを切りました。

クラウドファンディングを実施した際に、“子どもが大きくなった時に、働きやすい環境が整っていることを願って支援したい”という親御さんからのコメントに心を動かされたことも、私たちの原動力となっています。

事業は順調で、主に中小企業やNPOなど、小規模ですが社会的に意義ある事業をされている方々をITの力でサポートすることで、共に拡大・成長を目指しています。かつての「眼鏡」がそうだったように、テクノロジーは環境を変え、障害を無くすことができると私たちは信じています。事業の発展とともにアプリ開発も進めていきます。

また、【タスクの管理=時間の管理=注意力の管理】だと考えているので、今後は「トークンエコノミー」といって、タスクを達成したら、キャラクターが成長していくなど、モチベーションが上がるような機能も開発していきたいです。

モリサワに期待すること

寺戸氏:フォントを選ぶ際には可読性と視認性を最優先し、デザイン性と両立できるフォントを求めています。モリサワにはこの2つが両立したフォントを提供いただいて、今後もクリエイティブな仕事にインスピレーションを与え続けてくださることに期待しています。

また、「発達障害」の認知度はかなり上がってきていますが、学校など教育機関、また私が就労支援をしながら関わっている障害専門の部局でもその特性理解が十分とは言えません。「コンダクター」だけですべて解決できると思ってはいませんが、世の中での発達障害特性に関する理解がさらに広まり、それぞれが適した環境の中でいきいきと力を発揮できる社会の実現を目指して、ユーザーの声を反映し、改善し続けていきたいです。

モリサワには今後もUDフォントを中心としたフォントの分野で、当事者やそこに関わる人のために協力いただきたいです。そして、生活の中での困りごとや、働きたいという意欲や想いの支援に関わる「コンダクター」のような事例が増えると嬉しいです。