ブログ - Morisawa DTP Lab.

page2017基調講演参加(1)

カテゴリ:イベント

こんにちは、ダイリンです。

印刷業界年初のイベント「page2017」が2/8~2/10にかけて開催されました。
今回は、天気も大きくは崩れず、来場者の合計は71,910名と昨年から2.2%増え、展示会参加関係者の方々の頑張りが報われる結果となりました。

page2017来場者データはこちら(JAGAT)

また最近のpageは展示もさることながら、基調講演やセミナーが充実し、これを目的に来場される方が多くなってきています。

今回はモリサワブースのご案内と、多くのセミナーメニューの中から基調講演を2つ受講しましたので、その内容の一部を2回に渡ってレポートします。 

モリサワブースのご紹介

page2017におけるモリサワのテーマは
「Design First~デザインの力で印刷の価値を上げる~」

私たちが日々使っている「デザイン」という言葉の定義は、「ある課題を解決するために思考・概念の組み立て(設計)を行いそれを様々な媒体に応じて表現すること」だそうです。(wikipedia「デザイン」より

デザインは、グラフィックにとどまらず使いやすさやコミュニケーションなど、社会におけるさまざまな課題を解決し価値を生み出すものであるとし、モリサワの商品群とどの様に関わっていけるかを考え抜いた展示としました。

【出展製品】

〈フォントソリューション〉
MORISAWA PASSPORT 新書体UD書体TypeSquare 

〈インバウンド対応電子配信ツール〉
MCCatalog+/Catalog Pocket

〈組版ソリューション〉
LayoutSquare [NEW]MC-Smart 3

〈可変印刷ソフトウェア〉
MVP 7

〈eBookソリューション〉
MCMagazineMCComic/MCBook

〈デジタル印刷機〉
RISAPRESS Color720 [NEW]

〈その他〉
Adobe Creative Cloud

OKI MICROLINE VINCI

基調講演1
ザ・マーケティング ~北米最新マーケティングメソッド

Ron Jacobs(Jacobs & Clevenger,INC. President)
田中 洋(中央大学ビジネススクール 大学院教授)

アメリカでマーケティングの教科書とされている『ザ・マーケティング』著者のロン・ジェイコブス氏と、モデレータに国内マーケティング学会の重鎮、田中洋教授を揃えた豪華な顔ぶれ。難解なマーケティング用語をその都度ジェイコブス氏に確認しながら逐次通訳し、私たち日本の印刷業界の聴衆に向けたわかりやすい解説でした。

お話の中で心に残った内容をご紹介致します。

※通訳を交えた講演部分は引用文形式となります。ご了承ください。

『モバイルファーストの時代は、いかにカスタマージャーニーを組み立てられるかが重要!』

市場が大きく変容していく中で印刷会社が生き残っていくには、顧客のニーズを正しく汲み取り、さまざまなメディアを駆使して販促の支援をしなければならない。またなによりカスタマージャーニー(最終消費者が購入に至るプロセス)を考えた提案が必要。

 これは、ジョー・ウェブ博士の著書「未来を破壊する」でも語られていましたが、消費者は、年代によってさまざまなメディアから情報を入手して商品購入に至っており、ストーリーを想定して販売施策を打たないと、顧客の心に響かないと説明されていました。

意外にも「DMの開封率や保存率は、実は20代の反応が一番高い」という調査結果があります。年代によって心に響くメディアも変わることはなんとなく感じていましたが、この結果には、昭和生まれの私にはちょっとオドロキでした。

企業が考慮しなければいけない5世代の購買層
各世代によりカスタマージャーニーが変わってくる。どの層がどのメディアを使って購入にいたるかを考える必要があります。

『欧米ではバリアブルDMも20世紀のイノベーションだった』

ジェイコブス氏はさらに、有効なツールの一つに「バリアブル印刷」を使った紙のDMに言及。

バリアブルDMは欧米では20年前から利用されてきたが、バリアブルDMも20世紀のイノベーションであって、既に欧米では時代遅れとなりつつある。というのも競合他社は、あらゆるメディアを使って販促提案を仕掛けて来ており、バリアブルDMだけを提案してきた印刷業界は後手にまわることが多くなってきている。

印刷業界も「マーケティングサービスプロバイダー」となるのならデジタルマーケティングを理解し複合的な提案をするべきだ。デジタルマーケティングツールのほとんどがサブスクリプション(年契約)提供されており、誰もが比較的小さな資本で実践できるのだから、いつでも使えるようにしておく必要がある。

バリアブルDMだけ、メールだけの販促施策ではもはや競合には勝てないこと。ストーリーを考え、さまざまなメディアを複合的に提案するのが現在の勝ちパターンということのようです。

この流れは、もう一つ受講した基調講演2『デジタルとアナログの最適解~マーケティングオートメーションと印刷ビジネスの関係 』でもお話がありましたので、次回ご紹介します。

『常に小さな目標を俊敏にこなす仕事の仕方が求められる』

最近のWebサイトは顧客からの興味を引出すため、ホワイトペーパー(白書や事例集)をダウンロードできるようにし、ブログなどで興味がありそうな記事を掲載し、知りたい情報が見やすく検索しやすくなるようレイアウトを整理する。これらWebサイトの工夫は、全てが数値化され分析できるため、Web修正が成功か失敗かの結果が直ぐに得られ、次の提案や改善に取り組める。小さな目標(スモールサクセス)を俊敏(アジャイル)に改善対応できることがとても重要。

印刷物の販促施策は、数値化が難しかった=効果が見えにくかったのですが、紙も数値化・分析できれば、小さなPDCAを短期間で回すことで、改良・改善しながら、次の提案に盛り込むことができるのです。

デジタルマーケティングの世界は常にデータ分析から始まり、それを元に小さな目標や仮説を立てて実行する。この舵取りを繰り返し実行することにより、大きなリスクがなく最適な改善が必要なタイミングで実行・構築されるようになることを説いておられました。

最近よく耳にする『「スモールサクセス」でプロジェクトを「アジャイル(俊敏)」に実行する』という言葉は、システム構築の進め方だけでなく、サイトやデザイン設計、ひいては日々の仕事にも取り入れることができそうです。

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紙はアナログなメディアと言われていますが、「少し手元に届くのが遅い、デジタルで作成されたメディア」とも言えます。「届くのが遅い」こと自体はITを駆使することで短縮させれば良いわけで、DMを含むモノが届く満足感やその先の購入に至るまでのプロセスは、デジタルメディアには得られない体験を与えることができます。

この講演では、

印刷会社がマーケティングサービスプロバイダーとして顧客の販促貢献をされるのなら、印刷物やメールなど複数のメディアを使い、最終顧客に最高の体験を提供し、商品を購入いただくことが一番大事なのだということ。

印刷会社だからといって紙のみにこだわる時代は終わった。

ということをお伝えしたかったのだと思います。

これからの印刷業は、技術や品質での勝負もさることながら、マーケティング的な手法により、顧客の心を獲得していく時代となるのかもしれません。

バリアブル印刷で制作される印刷物も、届いたのち消費者がどのような行動を取られるのかをイメージしながら制作することが重要となってくるでしょう。

今回の基調講演1の内容は『JAGAT info』2017年3月号にて紹介されるとのことですので、そちらをあわせてご参照ください。

「カスタマージャーニー」や「アジャイル」など、これまでにないキーワードが多く登場した今回のMVP Labでしたが、如何でしたでしょうか?

前述しましたが、次回MVP Labは、基調講演2『デジタルとアナログの最適解~マーケティングオートメーションと印刷ビジネスの関係 』の受講レポートです。

どうぞご期待ください。

バリアブルプリントソフト「MVP」詳細はこちら