オプティカル?メトリクス?Adobeソフトの文字詰め機能・入門編!
この記事は「モリサワ note」にてリニューアル公開されています。
こんにちは。文字組ツメ太郎と申します。
「InDesignやIllustratorを使ってデザインを作ったはいいが、何か締まらない……」と悩んだことはありませんか?
例えば……
この画像も、いい感じではありますがなんとなく文字周辺がパラパラとして見えますね。
こういったデザイン作業で、意外と盲点なのが文字の「間隔」です。
■日本語における文字配置の基本
日本語書体は原則、正方形の枠(仮想ボディ)を基準に作られています。
そして、日本語組版の原則はベタ組み……つまりこの正方形の枠が接する形で配置されるのが基本です。(このあたりの話を詳しく知りたい方はぜひこちらもご覧ください!)
しかし見出しなど、大きく文字を使う時は文字間が目立って見えてしまうことがあるため、「文字を詰める」という作業が必要になってきます。
文字配置の調整はプロのひと手間、料理でいう「絶妙な塩加減で味が締まる」的なイメージですね。
ということで、今回は「Adobeソフトの文字詰め機能・入門編!」と題して、Adobeソフトでできる文字詰め設定を簡単にご紹介します。
■文字詰め設定はどこで行う?
文字詰めの設定は主にAdobeソフトの「文字パネル」で行います。
※後述の「プロポーショナルメトリクス」のみ、
・IllustratorはOpenTypeパネル
・InDesignは文字パネルメニューの「OpenType機能」で設定します。
どのような文字詰めをしたいかによって、使用するべき設定は異なってきます。今回はシチュエーションごとに、設定の特徴をそれぞれ説明していきます。
■Case1「とりあえず自動でいい感じにして!」という時
◎プロポーショナルメトリクス
プロポーショナルメトリクスは、フォント内に入っている情報(主に「1文字単位の」詰め情報)を参照して、自動で詰めを行ってくれる設定です。
プロポーショナルメトリクスに対応しているフォントの場合、個々の文字ごとに詰め情報を持っています。その情報をソフト上で呼び出すことによって詰めを行っています。
フォントベンダーが考える、その書体に最適な詰め組みを実現することができるのがこの設定です。
ただし、プロポーショナルメトリクスのみだと欧文部分についてはツメが行われないので、次に紹介するカーニング設定(メトリクス)と併用するのが基本です。
◎カーニング - メトリクス
カーニング設定内にある「メトリクス」、これもフォント内に入っている情報を参照して詰める設定です。
プロポーショナルメトリクスの1文字ずつの詰めに加えて、特定の文字ペア(Yo、AWなど)に対してさらに詰めの設定をします。これをペアカーニングと呼ぶこともあります。
ペアカーニングが設定されている部分にカーソルを持っていくと、どれくらい詰めがされているのかを数値で確認することができます。上の図では、「Ty」および「WA」「AV」でペアカーニングが設定されています。
フォント内にペアカーニング情報が無い場合は、プロポーショナルメトリクスと同じ詰まり方になります。
注意!
メトリクスの設定をするときは、手動でプロポーショナルメトリクスの設定もONにしておく必要があります。
(プロポーショナルメトリクスの設定がONになっていないと、後から1文字ずつ文字間の調整をするときに意図しない挙動をすることが確認されています。詳しく知りたい方は各種サイトをご覧ください。)
ちなみに、モリサワフォントではフォント名の頭が
・A-OTF→ペアカーニング情報未搭載
・A P-OTF→ペアカーニング情報搭載
という形で見分けられるようになっています。
※今後はペアカーニング情報を搭載したフォントが増えていく予定です!
◎カーニング - 和文等幅
カーニング設定内の「和文等幅」はその名の通り、和文部分は等しい幅……つまり詰めを行わないベタ組になります。(英数字はメトリクスと同様の動きです。)InDesignのデフォルトはこちらです。
本文など、ベタ組みにしたい部分についてはこちらの設定がオススメです。
◎カーニング - オプティカル
こちらも上2つと同じカーニング設定内の項目になりますが、「オプティカル」はフォント内の情報ではなく、ソフト側(InDesignやIllustrator)で文字の形を見て自動で詰めを行ってくれます。
詰め情報が搭載されていないフォントでも、こちらの設定を使うと自動で詰めることができます。
ワンポイント!
プロポーショナルメトリクスとオプティカルを同時にかけると、詰まりすぎて文字が重なってしまうことがあります。併用しないようにしましょう!
■Case2「ひとまず全文字まとめて詰めよう!」という時
◎トラッキング
+値で文字間が広がり、-値で詰まります。
文字列に対して、一律の数値でまとめて詰めを行うときに使う設定です。
トラッキングの時に使う単位「em」というのは全角幅(1文字分の幅)を示しています。
トラッキングの設定数値は1000/1000em(=1em=1文字分)という形になっています。つまり、1/1000文字単位の細かさで詰めの調整を行うことができるわけです。
◎文字ツメ
文字ツメ設定は、文字の両脇の余白(サイドベアリング)を削って詰めを行います。
あくまでも文字以外の余白部分を削っているだけなので、文字ツメ設定を100%にしても文字は重なりません。
■Case3「1文字ずつ微調整したい!」という時
◎カーニング - 数値指定
先ほど「メトリクス」や「和文等幅」でも使ったカーニングになりますが、ここを任意の数値に設定することで1文字ずつの間隔を調整することができます。
設定数値はトラッキングと同じく1/1000em単位です。
上の図ではメトリクス+プロポーショナルメトリクスの設定をしたうえで、さらに「ph」「ラフ」「ーブ」の間をカーニングで詰めてみました。
(詰めていることを分かりやすくするために、あえて極端に詰めを行っています)
カーニングでの微調整は、パネルで設定する以外にAlt+矢印キー(←および→)でも操作することが可能です。文字が詰まっていくのを目で確認しながら直感的に調整できて大変便利ですので、ぜひ覚えて帰ってください。
■ということで……
様々な機能がありましたね。他にも文字を詰められる設定は様々あるのですが、まずは入門編ということで代表的なところをご紹介しました。
まとめると、以下のようになります。
・自動で調整
→プロポーショナルメトリクス、カーニング(メトリクス、和文等幅、オプティカル)
・全文字まとめて調整→トラッキング、文字ツメ
・1文字ずつ調整→カーニング(数値指定)
以上を踏まえて、冒頭のデザインの文字詰め(&文字のサイズ調整)を行ったところ……
このようになりました!
文字がまとまって、全体的に雰囲気が締まったかと思います。
文字間が詰まった分スペースができたので、その分文字も大きく配置する余裕ができましたね。
どれくらい詰めればよいのか……などは作成するものや意図する雰囲気によって左右されるので一概には言えないのですが、まずはこういった「ソフトの機能を正しく把握する」というのがはじめの一歩かと思います。
みなさんも見出しなど大きく文字を配置するときは、ぜひ文字詰めの機能を使ってみてください!
それではまた次回!
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