三重県いなべ市
UDフォントで変わった
自治体情報発信マインド
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三重県いなべ市
市長日沖 靖 氏
「SDGs未来都市」に選定されている三重県いなべ市は梅林公園の再生や、脱炭素に向けた事業など、先進的な取り組みをさまざまにおこなっている。市の内外にその魅力を発信する機会が多いなか、情報がより多くの方に「伝わる」ために導入したのがUDフォントだ。故郷に「誇りと愛着」を持てるようブランド力を強化している日沖靖市長に、UDフォントの活用法や今後の展望などについて伺った。
UDフォントを使っていかに「伝わる」情報へ仕上げるか
私がUDフォントと初めて出会った時、その圧倒的な読みやすさに驚きました。当市は「いなべ市広報戦略基本方針」を掲げ、職員全員が広報マインドを持って情報発信を心がけていますが、UDフォントはそんな私たちになくてはならないものだなと。そこで2019年度に、全ての職員PCにUDフォントを導入しました。
現在は、市からの広報紙やWebサイトはもちろんですが、通知文チラシ、申請書など職員が作成するコンテンツに日々、活用しています。
施政方針を作成する時も私はUDフォントを使用しています。見る人が読みやすいようにと以前はゴシック体を太字にしていましたがUDフォントはその必要がなく、しかも文書を作っている私自身、非常に読みやすいです。
ただ、UDフォントを使えば万事OKというわけではありません。このことを教えてくださったのはモリサワさんです。モリサワさんはフォントを開発・提供するだけでなく、広報物がより「伝わる」にはどうすればよいかを常に考えておられ、当市の職員に向けても研修をおこなっていただきました。
研修では、実際に各課で使用中の書類をブラッシュアップしたのですが、必要な情報とそうでない情報の整理の仕方や、見やすいレイアウト手法、効果的な余白の取り方などについて教えていただきました。おかげでいなべ市職員の資料作成スキルが上がることにより、広報マインド、市民サービスの向上につながっていると自負しています。
スキルアップだけではない!
研修で生まれている好循環
UDフォントは内部向け資料にも外部向け資料にも幅広く使用しています。例えば外部向け広報物の1つに、国民健康保険の封筒があります。「何の封筒」であるかが一目でわかるよう「国民健康保険」の文字ウエイトを意識して強調するなど、フォントの力に頼るだけでなく情報にメリハリを付け、市民に開封してもらえるように配慮しています。
一方、内部向け資料として、議会へ提出する文書があります。この資料を読むのは議員さんなのでUDフォントを使うのはもちろん、議員さんたちが読みやすいよう職員は研修で学んだことをもとに自発的に配慮をするようになりました。
こうした変化はモリサワさんの研修の賜物だと感じています。私はあらゆる面で職員の自主性を重んじていますので、UDフォントの使用や研修への参加は任意としていますが、受講した職員らはUDフォントの有用性を大いに実感。今まで延べ67人が研修を受講するなか、まだ受講していない職員に資料作成のコツを教える動きが出てくるなど、UDフォントを軸とした好循環がいろいろと庁内で生まれています。
UDフォントを使った授業で「伝わる」大切さを実感した中学生
市内の小中学校に導入したタブレット端末にも、UDフォントを採用しています。より、「伝わる」資料について小中学生にも学んでもらえたらと、モリサワさんにはいなべ市立 藤原中学校でも授業をおこなっていただきました。
授業では、SDGsに関する情報発信の取り組みとして『いなべティーンフェアトレードブック』を制作。生徒たちはUDフォントの使い方や資料のレイアウト方法などを学んだのち、フェアトレード商品を扱う市内30箇所以上の事業所を取材し、その特徴などをレポートにまとめました。
今まで資料を作ったことがなかった生徒も、フォントを変えたり写真の大きさを揃えたりすることで読みやすさがかなり変わることを体験。さらに自分たちが学んだことを小学5年生に教える授業を通し、資料作りのコツを浸透させていきました。
「伝わる」を考えることは人の成長過程でとても重要です。相手がいるから、相談もできるわけですね。このようなことを理解するうえで、学びの場で「伝わる」とはどういうことかを考え、理解し、自分で作るスキルを経験できる機会を作れたことはとても有意義だと思います。ぜひ、モリサワさんと今後も協力し合い、子どもから大人まで、より伝わる関係を市としてもバックアップしていきたいと思っています。
いろいろな気づきを与えてくれるUDフォントが今後、社会のスタンダードになったらいいなと思います。またモリサワさんがおこなわれている啓発活動も継続して、市内の学校での授業や職員向けの研修をぜひ今後ともお願いできたらと考えています。