フェンリル株式会社
デザインの最前線で選ばれる
Morisawa Fontsシームレスな移行と
広がるフォント活用の可能性
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フェンリル株式会社
デザインセンター
デザイン戦略部 アートディレクター中西弘樹氏(中)
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デザインセンター
デザイン部 課長/ディレクター宮地祥太氏(右)
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ブランディング部
デザイナー児玉諭哉氏(左)
スマートフォンアプリ、Webアプリの開発と自社プロダクトの開発を主に、UXやUIデザインを手掛けるフェンリル株式会社(以下、フェンリル)。常にユーザー目線を意識しているというアプリの開発実績は600を超え、中には月間700万PVや100万ダウンロードを獲得したものもあるという。こうしたアプリ開発や自社広報物など、さまざまな場面でモリサワのフォントを活用している。
今回、MORISAWA PASSPORTから後継サービスであるMorisawa Fontsへ移行したフェンリルのディレクター3名に、Morisawa Fontsの印象や導入後の変化、そしてフォントの選び方について話を伺った。
所要時間約15分。シームレスな切り替えが実現
スマートフォン黎明期である2008年よりアプリ開発事業に参入したフェンリル。当時は一部デザイナーのMacのみMORISAWA PASSPORTを導入していたが、その後、事業領域は飛躍的に拡大。デザイン業務に携わる全社員へライセンスを支給し、多くの業務に活用していた。
そんな中、MORISAWA PASSPORTの終了と、後継となるフォントのサブスクリプションサービスMorisawa Fonts提供の一報が届いたという。「多くのフォントを自由に使える当たり前の環境を変えないためには、移行すべきだろう」と、フェンリルの決断は速かった。ちょうどライセンスの更新時期が迫っていたというタイミングも後押しとなり、70名を超えるメンバーのMacに対し、Morisawa Fontsへの一斉切り替えが進むことになる。
大人数が同時にサービスの切り替えをする場合、トラブルを防ぐために担当者が移行手順を示したマニュアルを作成することも少なくないだろう。Morisawa Fontsへの移行を取り仕切ったディレクターの宮地氏も、その一人。過去には手順ごとに画面キャプチャを貼り付け、独自のマニュアルを作ったこともあったそうだ。しかし、今回全スタッフに共有したのは、移行手順を示したWebページのURLと数行の文章のみ。宮地氏が「とても簡単そうだった」と語るように、Desktop ManagerのインストールからMORISAWA PASSPORTで使用していたフォントの一括アクティベート(有効化)まで、15分ほどで終了したという。アートディレクターの中西氏も「何らかのトラブルが発生して当たり前だと思っていた」と言うが、その予想は見事に覆された。
活用シーンの増加と思いがけない変化
Morisawa Fontsへの移行が完了した現在、その使用感を尋ねると「良い意味で、これまでと変わりない」という返事が。今後、新入社員や中途社員といった新たな戦力が加入する際には、Macの初期設定にかかる時間の大幅な短縮が見込まれることから、早期に移行を完了できたメリットも感じているという。
一方、社内外のイベントやノベルティ、自社プロダクトのグッズなどブランディングに関する幅広い広報物等を制作するブランディング部。ここでは、Morisawa Fontsの各種機能を業務に活用し始めている。まず一つは、選択したフォントに好きな文章を当てはめ、即時表示できる「プレビュー機能」。広報物はシンプルに文字のみで制作するものも多く、デザインの一部としてフォントが担う役割は大きい。そのため、フォント選びは慎重に、丁寧に行うことが常である。近年増加したオンラインミーティングの場では、Morisawa Fontsのプレビュー画面を共有することでフォント選定のディスカッションがスピーディに進み、候補として選んだフォントをプレビュー画面上でアクティベートすることが可能に。ワンクリックで広報物へ反映できるため、全体の業務効率もアップしたそうだ。
そして二つ目は、利用するフォントをプロジェクト毎にグループ化できる「コレクション機能」だ。例えばメッセージ性の強い広報物にはヒューマニスティックな明朝体、情報を的確に伝達したい広報物には視認性の高いゴシック体といったように、発信する内容によってフォントを変えることは多い。しかし同じ明朝体であっても、プロジェクトの中で異なるフォントファミリーの明朝体が混在すると、受け手の印象は変わってしまう。
ブランディング部デザイナーの児玉氏が「発信のたびに使用フォントが微妙に異なると、その印象のブレが企業イメージのブレにつながる可能性があります」と説明するように、フォントを統一することはブランディングの一つなのだ。現在は広報物に使用する固定フォントをコレクションに登録。プロジェクトへ新たに関わるメンバーや普段デザイン業務に携わっていないメンバーへのスムーズな情報共有に繋がり、ブレの発生する懸念が払拭されたと話す。
業務での活用機会が増えるうちに、バックオフィスを中心とした非デザイナーたちの行動や気持ちにも変化が波及。「フォントはデザイナーだけのものではない、フォントは面白いと思ってもらえたんじゃないでしょうか」と児玉氏。Morisawa Fontsの使用でフォント選びのハードルが下がった。そのため、非デザイナーが積極的に使用するフォントの提案をしたり、ライセンスを持たないバックオフィス担当者からMorisawa Fontsの導入を検討したりする声が届いているそう。「フォントがもっと身近な存在になった」と、うれしい声が聞こえてきた。
モリサワのフォントを選ぶ理由が、また一つ増えた
フェンリルでは、アプリやWebサイトの開発において、実にさまざまなシーンでモリサワのフォントを使用している。今回紹介してくれたのは、西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)の列車運行情報をリアルタイムに提供するWebアプリ「JR西日本 列車走行位置」。
メインで使用しているフォントは「UD新ゴ」。実際の駅名標で使われている「新ゴ」に合わせて選定したものだが、駅名の文字数に合わせてコンデンス書体※も活用している。
※コンデンス書体:基準となる書体に比べて、横幅が狭く設計されている書体。横幅を狭くしつつも、視認性・可読性を損なうことなく表示できるようにデザインされている。
スマートフォンの小さな画面でも視認性と可読性を保ち、誤認識や誤案内が防げるように、コンデンス書体の提案、及びユーザーが見慣れている駅名標のフォントをベースとしたユニバーサルデザイン書体を使うことで、JR西日本らしいデザインにすることをフェンリルから提案したという。
フォントの選定基準を中西氏に尋ねたところ、目的や要件にかない文脈に沿うフォントであることを前提として、以下の多角的な視点を教えてくれた。
①書体の由来、文字の表情、本文を組んだ時の印象などの意味性・情緒性
②ユニバーサルデザイン、コンデンス書体、ペアカーニングなどの機能性
③デバイスフォント※だから誰でも使える、ウェイトが豊富で欧文と混植しやすいなどの利便性
ただ、最も注意深く確認する点として、利用規約を挙げる。以前、あるプロダクトロゴにモリサワのフォントを使用したいと考えたが、当時は商標登録ができずに断念したことがあったそうだ。「Morisawa Fontsはすべてのフォントで商標登録ができるようになりました。おかげで、より一層使いやすくなったと思います」(中西氏)
※デバイスフォント:PCやスマートフォンなどへ予めインストールされているOS標準のフォント
モバイルアプリやWebサイト、そして紙媒体など、フォントを使用したデザインのアウトプット先が多様を極める現代では、より簡単に、より安全にフォントを使える有益性は計り知れない。“デザインと技術”をキーワードに、デザインの最前線で活躍するフェンリルにおいて、Morisawa Fontsが新たな可能性を生む存在となっている。