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株式会社滋賀レイクスターズ

「滋賀レイクス」の
リブランディング成功は、
フォント統一の徹底と実践力から生まれた

株式会社滋賀レイクスターズ
  • 株式会社滋賀レイクスターズ コミュニケーションデザイン室 室長

    大宮健司氏

  • パートナー部 カスタマーサクセスG グループ長

    岡田拓也氏

株式会社滋賀レイクスターズが運営する「滋賀レイクス」は、日本を代表する湖(Lake)・琵琶湖にルーツを持つプロバスケットボールチームだ。チーム創立15年目となる2022年7月に大胆なリブランディングを行い、チーム呼称を「滋賀レイクスターズ」から「滋賀レイクス」へ変更したほか、ロゴマークやユニフォームなども一新。さらに自社のオフィシャルのフォントとして、英数字にはリブランディングに合わせて開発されたオリジナル『レイクスフォント』を、和文には『新ゴ』を定め、すべてのクリエイティブで使用するレギュレーションにしたという。その対象は、チームが発信する広告物から社内資料まで多岐にわたる。リブランディング開始から約2年が経過した今、リブランディングやフォント指定の狙いから社内外における新たなブランドイメージの浸透効果まで、コミュニケーションデザイン室の大宮氏とパートナー部の岡田氏に話を聞いた。

最小限のカラーとフォントで独自デザインを確立

滋賀が誇るプロバスケットボールチームとして、さらなる飛躍を誓う一歩として実施された「滋賀レイクス」のリブランディング。監修は数々のプロスポーツチームのユニフォームやロゴ、グラフィックなどのデザインを手掛ける日本で唯一のスポーツ専門デザイナーであり、滋賀県出身で滋賀レイクスのポスターデザインなども手掛けていた大岩 Larry(ラリー) 正志氏が務め、新時代を告げる改革が行われた。

 

大きく変わったのは、ロゴマークだ。ソリッド感のあるグラフィカルなものから、頭文字である「S」をピックアップしたシンプルで力強いデザインへ。この変化が、リブランディングを象徴するテーマ性を表しているといえる。ラリー氏がこだわったのは、カラーとフォントの固定化。さらに効果的なエフェクトとなるグラデーションなどの装飾を排除し、「滋賀レイクス」のメインカラーである「レイクスブルー」のインパクトを高めた。シンプルなデザインによって引き立てられるフォントには、ラリー氏自らが開発したオリジナルフォント『レイクスフォント』と、視認性が高くシステマチックな雰囲気を持つ『新ゴ』の2種類を選定。これらのビジュアル・アイデンティティをユニフォームやポスター、パンフレット、SNSといったすべてのクリエイティブに統一して反映することで、「滋賀レイクス」の新たな個性を確立していった。

左がリブランディング前、右がリブランディング後の冊子

和文フォントに『新ゴ』が選ばれたのには、ラリー氏の熱い推薦があったそうだ。「『新ゴ』の第一印象は、親しみやすい書体だと思いました。デザイン性が高く、ある意味クセの強い『レイクスフォント』と並んだ際の相性もとても良いです。2年間使い続けてきた今だからこそ、なぜ『新ゴ』を推してくださったのか分かる気がします」とリブランディングの社内への浸透を推し進めてきた大宮氏は教えてくれた。

全社内でフォントを統一し意識改革を実現

ブランディングにおいて、フォントを指定することは決して珍しくないだろう。しかし「滋賀レイクス」が稀有である理由として、広報物のみならず、社内資料といった自社に関わるすべてのフォントを徹底して統一したことにある。リブランディング以前には各々が好きなフォントを効果的に活用していたというから、なおさらだ。

 

「特に営業スタッフはそれぞれが営業資料を自作していたため、すべて『新ゴ』に置き換えて再調整する必要があり、面倒だという声も聞こえました」と話してくれたのは、パートナー部の岡田氏。日常的に誰もが使用する和文フォントの変更だけに、多くのスタッフたちに変更の“手間”が生まれたのは事実だが、その“手間”があったことによって、社内のブランディング意識は飛躍的に向上したそうだ。

オリジナルフォント『レイクスフォント』と『新ゴ』を使った印刷物
スタッフが『新ゴ』で作成した営業資料

ともすれば、リブランディングは担当部署だけがルールを知り、実践する体制になりがちなもの。「滋賀レイクス」では、事前にフォント統一の重要性、リブランディングにおける意味付けを丁寧に説明したという。スタッフ一人ひとりが『新ゴ』を使用することにより、自分たちもリブランディングの一端を担っているという責任感が芽生え、毎日目にするものだからこそ視覚的な積み重ねが自信につながる。大宮氏は「リブランディングの開始から2年が経った今でも、その軸を守りながら継続できているのは社員全員の力によるところが大きいですね」と語ってくれた。

今まで以上に創意工夫が求められるクリエイティブ

新たなビジュアル・アイデンティティは、ポスターやバナーといったグラフィックに関わる制作チームや外部デザイナーにとっても大きな変革。社内同様に丁寧なコミュニケーションをとることで、レギュレーションの共有に努めたそうだ。結果として、フォント指定は都度フォントを選定する労力を減らすことにもつながり、作業効率アップに寄与。課題となったのは、チームカラーである「レイクスブルー」と「スターズイエロー」、ホワイト、ブラックの4色に制限されたデザインだった。華美な装飾をそぎ落とし、スタイリッシュさとシンプルさを突き詰めたデザイン制作は、我慢の連続。そんな状況下で「もっと素材を引き立てたい」「目立たせたい」という想いを具現化できるものが、フォントだったという。

『レイクスフォント』と『新ゴ』は明確に異なる役割を与えて、使い分けている。『レイクスフォント』では、タイトルや見出しなど、リブランディングされたイメージのまま、デザイン的に「見る文字」として使用される場面が多い。一方『新ゴ』では、リブランディングのイメージを維持しながら、情報の伝達を目的とした"読む文字"として使用している。そのため、英数字はすべて『レイクスフォント』というわけではなく、英数字であっても、和文と合わせる部分や情報を伝える部分では『新ゴ』の英数字を使うという。『新ゴ』は8ウエイト、太さの異なる8種類のフォントがあるため、それらすべてを駆使することで、文字サイズや配置によって情報の強弱を表現したり、アイキャッチに活用したりすることができる。シンプルだからこそフォントのデザインパーツとしての重要性が拡大。イメージの統一感を維持しながら、クリエイティビティの幅が広がった。

2023年度のホームゲームご招待券では、インパクトのあるタイトルや見出しの欧文に『レイクスフォント』を使用し、情報や説明文では『新ゴ』のウエイトを使い分けながら、和文欧文を使用している。『レイクスフォント』『新ゴ』が混在してもリブランディングされたイメージで統一されている。

リブランディング成功を導いたフォントの可能性

リブランディング当初は、一新されたクリエイティブの数々に対してファンから「かっこいい」といった意見とともに、以前のデザインに愛着があったという声も一部あったという。しかし、「滋賀レイクス」独自の表現を守り続けた結果、そういった声も聞こえなくなり、それこそがファンにも地元の人たちにも新しい「滋賀レイクス」が受け入れられた証だろう。

駅に掲出されている応援バナー

「最初の2~3年は浸透期だと考えていました。これからはまた新しい試みにチャレンジするとき。フォント指定はそのまま継続しつつクリエイティブの表現の幅を段階的に少しずつ広げていくなど、今後目指す方向性に向かってすべきことをラリーさんと話しています」というように、リブランディングに端を発した変革はまだ終わらない。

 

最後に、大宮氏にブランディングにおけるフォントの価値を尋ねてみた。「新しいブランドを構築し、それを社内外で浸透させるためにずっとデザインの統一性を守り続けてきました。改めて感じたのは、文字で表現できることの多彩さと影響力ですね。同じフォントで発信していたからこそクリエイティブに安心感が生まれますし、同じフォントを社内で共有したからこそ、リブランディングを推進する結束力が増しました。今、滋賀レイクスのリブランディングが成功していると思える理由のひとつには、フォントの力が大きいと考えています」

  • ※掲載されている情報は2024年10月時点のものです