郵便事業株式会社
モリサワフォントで、
年賀状をより個性的に-。
文字の持つ力が、
この1年への想いを伝え、
人と人をつなぐ。
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郵便事業株式会社 本社 国内営業統括本部 切手・葉書部 eコマース室兼務商品開発担当 課長
西村 哲 氏
新年の挨拶として毎年当たり前のようにやりとりされていた「年賀状」。しかし、E-mailやSNSで年始の挨拶を 済ませる人が増え、年賀状を出さないという人も増えている。そんな中、郵便事業株式会社では年賀特設サイト 「郵便年賀.jp」を開設するとともに、独自の年賀状作成ソフト「はがきデザインキット」をリリース。同ソフトには モリサワフォントが搭載されている。
年賀状による「つながり」の 再認識を目指して
「みなさんの周囲でもそうだと思うのですが、最近は年賀状を出さないという方が増えています。これは、毎年行っているリサーチの結果からも明らかです。」そう語るのは、郵便事業株式会社の商品企画担当、西村哲氏だ。しかし一方で「面白い結果も出ているんです」とも言う。
「個人情報保護の観点から住所録がない、年賀状をやりとりする程の付き合いがないので出す相手がいない、面倒くさいなどといった理由から、年賀状を出さないという人は増えています。メールなどで済ませてしまう人も多いでしょう。ところが年賀状を出さない一方で、実は“年賀状を受け取りたい”と思っている方もたくさんいるのです。自分は出さないけど、受け取りたい。」
つまり、年賀状の潜在需要はまだまだあるのではないかと考えられる。そこで、年賀状を作ったりやりとりする楽しさを提案し、需要を喚起するために、同社ではさまざまな取り組みを行ってきた。年賀特設サイト「郵便年賀.jp」はその代表格。「年賀状を出す相手がいない」という人に向けて、有名人に年賀状を出すと、自分も年賀状をもらえるという「有名人年賀状」サービスを実施。また、SNS大手のミクシィと組み、相手の住所を知らなくても年賀状が出せる「ミクシィ年賀状」、また、リプレックス株式会社と連携し運営している「ウェブポ」では、オンラインで年賀状を作成・印刷・投函できるサービスを提供している。そして2008年からは、郵便事業自らが、年賀状作成ソフト「はがきデザインキット」をリリースしている。
「紙の年賀状の時代は、はがきを販売したらそれ以上のことは(販売面では)やっていませんでした。しかし、はがきを販売した後も何かお客さまをサポートできることはないかと考え、オリジナリティのある年賀状を作成できるはがきデザインキットをご提供しています。」
はがきデザインキットは、ユーザがWebサイトからダウンロードして使用するAdobe AIR アプリケーション。2010年11月に公開されるバージョンで3年目となる。
「ただの年賀状作成ソフトではなく、ユーザがオリジナリティを出せるように、テンプレートやパーツを充実させています。ダウンロード数は、1年目が120万件、2年目はユーザビリティーを向上させた新バージョンを投入して269万件という結果でした。今シーズンは400万件のダウンロードを見込んでいます。」
はがきデザインキットと、郵便年賀.jpで提供されるサービスと併せて、年賀状を作って送るまでをワンストップで提供できるのが、郵便事業ならではの強み。昨年は、指定の電話番号に電話をかけてメッセージを録音するとQRコードが発行され、年賀状にそのコードを貼りつける事で受け取った相手が音声を聞くことができる「サウンド年賀」を実現していたが、今シーズンは動画に対応した「ムービーデコ年賀」や、Webサイト上で、はんこのような図案が作成できる「手作り風はんこ作成ツール」、Twitterのツイートからこの1年を象徴する漢字を選び出すサービスなど、さらに魅力がアップしている。
モリサワフォントの搭載で文字でもオリジナリティを
はがきデザインキットには、年賀状の図案をデザインする機能はもちろん、住所録のCSVファイルなどを読み込んで宛名を印刷する機能も備えている。そして、そのためのフォントとして、モリサワフォントが5書体搭載されている。パソコン搭載のフォントではなく、このモリサワフォントの中からユーザが書体を選択して使用する。モリサワフォントを採用した理由について、西村氏は次のように話す。「パソコンで作成する年賀状に対して、どうしても無機質な印象を持たれてしまうことがあります。はがきデザインキットは図柄のオリジナリティを出すことができるものですが、図柄だけではなく、宛名面でもできる限りユーザのオリジナリティが出せないかと考えたのです。そのようなことを考えていたときに、ちょうどモリサワフォントの存在を知りました。実はそれまで、モリサワというフォントメーカは知らなかったのですが、書体見本帳を見て、これをぜひはがきデザインキットで使ってみたいと思いました。」モリサワフォントを採用する以前、つまりはがきデザインキットの最初のバージョンでは、味気ない書体しか搭載されていなかった。しかし、リサーチの結果から、容量が限られるなかでも宛名面にオリジナリティを持たせることを検討した。
「調査したところ、10代、20代、30代の女性は、手書きの年賀状を受け取りたいと思っていることがわかったのです。手書きは無理だとしても、宛名面を含めて、書体に個性を持たせる必要性を感じました。実際、いくらパソコンで作成した年賀状だからといって、宛名があまりに味気ないのは寂しいと思うのです。搭載できる書体の数にはどうしても限りがありますが、モリサワフォントを使うことで、少しでも年賀状の文章や宛名に個性が出せればよいと思っています。」 2011年用のはがきデザインキットでは「UD黎ミンR」、「見出ゴMB1」「じゅん34」、「新正楷書CBSK1」、「新ゴU+ネオツデイU-KS」の5 書体を搭載。モリサワフォントを採用したことによって、まず「周囲に驚かれた」と西村氏は言う。「(アプリへのモリサワフォントの搭載という)そんなことができるんだ」という声があった。また、Webメディアでの報道をきっかけにブログで触れられるといった反響も。そして何よりも「使う方の“らしさ”が出せるようになった」(西村氏)ことに満足しているという。
2011年の年賀状シーズンに向けて、はがきデザインキットはもちろん、コンテンツサイトで発送まで済ませることができるワンストップサービスの提供、有名人年賀状、そしてYahoo! JAPANとの提携など、よりいっそうの充実を図る同社。西村氏は最後に、次のように語った。
「モリサワのFontPark 2.0というWebサイトがありますが、何かしらの連携ができたら面白いのではないかと思っています。世の中には年賀状だけで繋がっている関係もあります。そんな年賀状の、一年一年の重み、一文字一文字の重みといったものを、遊び心を持ちながらケアしていけたらと思っています。」