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Mac Fan編集部

時代に応じて移り変わるフォントは、
定期的に見つめ直す必要があります。
読みやすい誌面作りを目指し、
空気を入れ替えるようにフォントを
移行しました。

Mac Fan編集部
  • 株式会社毎日コミュニケーションズ 出版事業本部 編集第1部長 Mac Fan編集課 編集長

    小林 正明 氏

  • 株式会社パス

    米谷 テツヤ 氏

株式会社毎日コミュニケーションズが発行する「Mac Fan」は、1993年4月に創刊した老舗のApple製品専門誌だ。 そのMac Fan編集部が、2010年6月号で誌面をリニューアル。制作ワークフローの面では、Adobe InDesign CS4 を導入するとともに、MORISAWA PASSPORTを採用した。編集部やデザイナーが「読者が気づかないような ところで、読みやすくした」と語るリニューアル作業の内側について伺った。

InDesignのアップグレードと同時にMORISAWA PASSPORTを導入

株式会社毎日コミュニケーションズのApple製品専門誌「Mac Fan」は、2010年6月号から誌面を一新。本文書体を全てモリサワの書体に変更し、それを機にMORISAWA PASSPORTの導入も果たした。同時に、レイアウトソフトもAdobe InDesign CSからInDesign CS4へと変更した。同誌の編集長を務める小林正明氏は、今回の誌面リニューアルについて、次のように話す。

Mac Fan 6月号(2010年4月27売り号)よりMORISAWA PASSPORTを採用。
誌面では「デザインにおけるフォントの力」としてモリサワフォント導入記事が掲載されている。

「Mac Fanは2003年のリニューアルで、本文を横組から縦組へと変えたのですが、このときからInDesignを導入しています。創刊から携わっていただいているアートディレクターの米谷テツヤ氏が、縦組を重視した組版エンジンを持つInDesignの将来性に着目していました。また、当時はInDesignが普及しておらず、編集者も操作に慣れていなかったので、この機にInDesignへ移行すれば制作ワークフローの分業が、きっちりできるかと逆説的な思いで導入しました。編集者は編集者の仕事に集中してほしかったので。」(小林氏)

その後、InDesign CSにアップグレードして使用していたが、そこでいったんワークフローの進化は止まっていた。

「PowerPCのMacはサポートが終了していますし、マシンスペック的にも辛くなっています。OSも、編集者は10.6を使っているのに、DTP用マシンが10.3.9という状態でした。新しいiMacを導入するにしても、10.6なわけです。そろそろ移行しなくてはいけないタイミングかな……ということで、2009年の後半に話が動き始めました。その頃は、次期バージョンでの導入を考えていましたが、現状選べるもので、発売からある程度の時間も経ち、安定してきた感のあるCS4の導入を決めました。同時に、フォントライセンスもMORISAWAPASSPORTへと乗り換えました。」(小林氏)

モリサワ書体の「メジャー感」を活かした読みやすい誌面作り

制作ワークフローを一新させたリニューアルだが、では誌面はどうかというと、小林氏は次のように話す。

「今回のリニューアルでは、特集の切り口を変えたとか、連載を増やしたといったようなことは、とくに行っていません。それよりも、読者からは見えにくいところで変更を行っています。リニューアルというと、ロゴまで変えるようなこともあると思います。しかしこのタイミングでは、雑誌として安定していることもあり、読者の方がすぐには気づかないところで、より読みやすくすることを心がけました。」

そして、小林氏が信頼を置くアートディレクターの米谷テツヤ氏は、誌面リニューアルのポイントとモリサワ書体のメリットについて、次のように話す。

「今回のリニューアルでは、誌面の雰囲気が変わるのだけれど、物理的にリニューアルの前と後を比べて“ココが変わった”というものではありません。例えるなら、空気を入れ替えるような感じでしょうか。例えば連載記事ではリニューアルによって大きくイメージを変えるということはしていませんから、以前の他社書体に近いものを選んでいます。モリサワ書体の強みは、ナンバーワンメーカーであるがゆえの、メジャー感だと思います。例えば他社のかな書体を使うと、マニアックな誌面に見えてしまうことがあります。一般の方に開かれた、誰でも手に取りやすいイメージとはちょっとずれてしまいます。」

使用するフォントのメーカーが変わるということに対して、編集者の間でとくに混乱はなかったという。編集部の小平淳一氏は「今回のリニューアルにあたって、どのように書体が変更になるのか、米谷氏にルール表を作っていただいたので、とくに困るということはありませんでした。」と振り返る。

米谷氏の作成したフォント変更ルール。これをベースにフォントが置き換えられ、移行された。

読者層を考えて書体の選択はあくまでもベーシックに

米谷氏の話にもあるように、使用する書体はベーシックなものが多い。現状では欧文も和文従属のものを使用しており、今のところ合成フォントも用いていない。これは、Mac Fanという雑誌のポジショニングとも大きく関わっている。

「Mac Fanの記事の7割は、実用的なハウツーなんです。そういった記事を求めている読者の方に、どうすればMac Fanをもう1号、もう1年買っていただけるか。それには今以上にスタンダードな誌面を提供し、違和感なく読めるようにする必要があります。内容面では、読者とともに成長して内容がレベルアップし続けると、今度はついてこれない読者が出てきてしまう。そうならないように、常に注意しています。」(小林氏)

雑誌のポジション、読者ターゲットを考えれば、今回のリニューアルが、編集者自身「読者が気づかないようなところで、読みやすくした」「見る人が見れば、わかるかもしれないという程度」と表現する内容であったのは当然だったのだろう。

今後は様子を見つつ、少しずつ使用する書体に変化を付けていく予定だ。米谷氏は「ひとまず合成フォントを使用せず移行しましたが、今後、かな書体に関しては変わっていくだろうと思います」と、そして小林氏は「アクセントとして、タイトル周りや見出しなどで、時期に応じて、米谷氏にいろいろと試していただければと思っています。そういう面では、MORISAWA PASSPORTのようなライセンス契約は、やはり便利ですね」と語る。

読者のことを考えて「スタンダード」を大事にし、大きいけれど「静かな」リニューアルを果たしたMac Fan。同誌の今後の誌面作りに、多くの読者も期待しているはずだ。