宮若市役所
広報紙は可読性の高さが第一。
文字を大きくすれば、
情報量が減るというジレンマが、
UD書体で解決。
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宮若市役所(福岡県) 企画財政課 企画調整係
林 慎治 氏
数ある自治体の広報紙で、最初にモリサワUD書体を採用したのが宮若市の広報紙「宮若生活」である。UD書体のリリース直後、2009年11月号に採用されて間もないが、市民からの反響も高いと言う。今回の取材では、広報紙に対する考え、UD書体の採用に至るまでの経緯を伺った。
DTPシステムの入れ換えを機に、『MORISAWA PASSPORT』を導入
宮若市の広報紙担当となって、もうすぐ6年という企画財政課の林慎治氏。驚くことに「宮若生活」は、取材から原稿作成、デザインに至るまで、林氏一人の手によって制作されているという。
「宮若市にDTPが導入されたのは平成8年です。隣の宗像市が、自治体としては日本で始めてDTPを導入しまして、広報担当者同士のつながりからDTPのメリットを知りました。コスト削減、作業効率化が大きな理由です。」
コスト削減、効率化は、自治体でも大命題のようだ。最近入れ換えたという現在の制作環境は、最新のMac Proに30インチのディスプレイ、InDesign CS4、『MORISAWA PASSPORT』。MORISAWA PASSPORTを導入する以前のフォント環境と当時の悩みを伺ってみた。
「最初はOCFフォントとQuarkXPressで制作していましたが、DTPシステムの入れ換えに伴いOS9がOSXになることで、これまでのフォントが動かないという問題が発生しました。そこで、InDesignでレイアウトを組むことを基本に『MORISAWA PASSPORT』を導入しました。行政にとって一番大事なのは費用が明確であることです。その点『MORISAWA PASSPORT』はリース契約だから、1台当たりの費用が非常に明確で、導入しやすかったです。全フォントが使えるという点も分かりやすく、ありがたいですね。あと、クロスプラットフォームなので、次の担当者がWindowsで制作するとなった場合も、問題なく移行できるのもメリットです。」
このように非常にメリットの多い『MORISAWA PASSPORT』だが、フォントの重要性を他の人に理解してもらうには、ひと苦労あったようだ。
「皆さまが広報紙に持たれるのは、“読みづらい”、“面白くない”というイメージで、読む気が起こらない方が多いと思います。そのイメージを変えるためには、ビジュアルよりもまずはフォントだと思うのです。そこでフォントの美しさを内部のスタッフに訴えるのですが、なかなか伝わりませんでした。形として出せればいい、という感じでした。」
フォントの美しさ、紙面の美しさを実感できて52,500円*という『MORISAWA PASSPORT』の導入費は、安いと林氏は語る。美しく、読みやすいフォントで広報紙を作りたい、という熱い思いがひしひしと伝わって来た。
*MORISAWA PASSPORTは2013年10月2日に価格改訂を行いました。
行く先々での反響の声に、UD書体の効果を実感
広報紙は読みやすさが一番大事だと言う林氏に、UDに対する考えとUD書体について質問したところ、次のような回答が返って来た。
「広報紙に対して市民の皆さまから、もっと文字を大きくして欲しいと言う声があり、一方で、文字を大きくすれば、情報量を減らさなければならないというジレンマがありました。そのような時期に、セミナーでUD書体の説明を聞き、まずは使ってみようということになったのです。」
読みやすさを追求する林氏とUD書体の出会いは必然だったのかもしれない。UD書体のような新しいフォントが追加料金無しで使えるのも『MORISAWA PASSPORT』の魅力の一つだ。また、自治体におけるユニバーサルデザインの在り方について、こうも語ってくれた。
「市民の皆さまにとってユニバーサルデザインは“人にやさしい”というイメージがあるかと思います。広報紙にUD書体を使うことで、市民の皆さまに『広報紙って人にやさしいね。』と感じてもらい、市に対して安心感を持って頂けるという効果があると思います。市民の皆さまと一番接点がある部分は申請書関係ですが、広報紙だけでなく申請書もUD書体で作成し、日本一美しい申請書や住民票を作れば『宮若市の住民票って、日本一キレイらしいよ。』と話題になる。UD書体導入によって得られる効果は、非常に大きいのではないでしょうか。」
林氏が所属する企画財政課・企画調整係はサイン事業も担当している。来年度のサイン事業の中で、公共施設の誘導サインにもUD書体を使用して行きたいとの考えもあるようだ。
では、UD書体採用後の市民の声はどうだろうか。2009年11月号から数えて、まだ3号というのにその反響は高い。「文字の大きさは変えていないのに、リュウミンをUD黎ミンに換えただけで『文字が大きくなったね。』、『濁点が読みやすくなったね。』という声を頂きました。取材先でこのような声を聞く度に、効果があったなと実感しています。」
言うまでもなく『MORISAWA PASSPORT』の魅力はUD書体だけではない。モリサワの全フォントが使えることの良さを実感している林氏は「広報紙以外に、チラシやポスターを作って欲しいと言われることがありますが『MORISAWA PASSPORT』だと、様々なフォントがあるので非常に助かります。」と、その優位性を笑顔で語ってくれた。
変わらないことへの挑戦。進化ではなく“深化”を期待
今後、『MORISAWA PASSPORT』に期待することは?と尋ねてみた。
「厚かましいお願いかもしれませんが、モリサワさんには“変わらないことへの挑戦”を続けて欲しいと思います。明朝の美しさであったり、ゴシックの力強さであったり、時がどんなに経とうと変わらない美しさがあります。進めて行くのではなく、深めて行く“深化”を期待したいと思います。」
最後に『MORISAWA PASSPORT』の導入を検討している官公庁、企業へのアドバイスを伺うと、「費用面だけではなく、しっかりとしたサポートがあり、様々な場所で講習会も開かれているので、非常に安心感があります。『MORISAWA PASSPORT』はとても分かりやすく、導入もしやすいので、迷うこと無く導入して頂いて大丈夫です。」と力強く語ってくれた。
これは余談だが、林氏は名刺をオリジナルで作成するほど、フォントにこだわりを持っている。きっと市民の皆さまにも「宮若生活」を通じて、その想いは伝わっているだろう。