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海津 ヨシノリ 氏

クリエイターに必要な資質とは、
どれだけDTPが進化しても、
最後は自分の感性を信じること。

海津 ヨシノリ 氏
  • グラフィックデザイナー イラストレーター

    海津 ヨシノリ 氏

パッケージデザインからイラストレーション制作など創作活動にとどまらず、執筆活動や美術大学の講師までこなすマルチクリエイターの海津ヨシノリ氏。DTPの黎明期から活躍する氏がどのようなビジョンを持って創作活動をしているのか。また、氏の創作活動にモリサワパスポートがどのように役立っているかをたずねてみた。

パソコンは自分の感性を具体化させるための道具

さまざまな顔を持つスーパークリエイターといった感じの海津氏だが、本業はパッケージなどのデザインを手がけるデザイナーだ。
「パッケージデザインの仕事では、あまり多くの書体を使うことはありません。やはり新ゴ、ゴシックMB101、フォークや仮名文字専用のハッピーがメインで明朝系などを使用することはほとんどないですね。しかし、それだけに見せ方に工夫が必要になってきます。」

海津氏がデザインしたアプリケーションのパッケージデザインでは、 Adobe Illustrator を利用し、文字に擬似的なパースをつける工夫がされていた。商品のコンセプトにあわせるという条件下で、いかにインパクトを与えることができるかの工夫が必要なのだそうだ。
「Adobe Illustrator の3D機能を使っているうちに、こうしたデザインのイメージが湧いてきました。アプリケーションの機能から作品のイメージを得ることが多いと思います。」

ひとつのアプリケーションに対して、すべての機能を完璧に使いこなす必要はないという。パソコンは自分のイメージを再現するための道具であって、必要な機能だけを使いこなせればいいのだそうだ。3Dアプリケーションからアニメーションまで、幅広い創作活動をおこなっている海津氏ならではのコメントだ。
「写植時代は、たたきあげの写植職人との折衝が大変でした。いかに自分が工夫したデザインでも、指定が下手だと受け付けてもらえませんでしたから。今ではモリサワパスポートのおかげで、自分で好きな書体を好きなだけ使うことができます。自由な発想を楽しんでいます。」ツールが進化したことで、デザインに集中できる現在の環境をとても満足しているようだ。

基本をおさえつつ、感性を大事にする。

アプリケーションのもつ機能からデザインの発想を受けることもあるという海津氏。オムニウェアのパッケージデザインでは、Illustrator の3D 機能から、テキストを3D 的に傾けることを思いつく。ソフトウェアのパッケージとしては奇抜なデザインだが、インパクトの強さがきわだった作品となった。

パッケージデザインのほかにも組み版などの仕事を請け負うこともあるが、海津氏自身はDTPの専門家ではないという。
「実は書体名を覚えるのも苦手であまりよく知らないんですよ。なので、いつも書体を選ぶときは、モリサワのホームページを利用しています。文章を入力して書体を選ぶことができるので、イメージがしやすくとても重宝しています。」

現在、モリサワパスポートを利用しているが、すべての書体をインストールするのではなく、その時々で利用したい書体をインストールするのだそうだ。モリサワパスポートはファミリーが多くそろっているところが気に入っているという。

「たとえば、メインタイトルには太い書体を使い、小タイトルには細い書体を使うのがデザインの基本ですよね。けれど、メインタイトルに細い書体を使い、そのかわりサイズを大きくする。こういう使い方もありなんですよね。」
これまでの既成概念にはこだわらない海津氏らしいコメントだ。しかし、海津氏は、現在の環境は便利になった反面、すべてをソフトウェアまかせにしがちになっていると警鐘を鳴らす。

「たとえば、レイアウトソフトなどを使って、欧文が最終行に入った文章を右なり行きに設定すると、文字間隔がばらけてしまうことがあります。このような場合は手動で文字間隔を調節する必要があります。」
感性を大事にしつつも基本の部分はしっかりとおさえなければならない。それがプロの仕事だということだ。

紙から電子化へ電子化から紙へ

多彩な側面をもつ海津氏は多摩美術大学造形表現学部において、非常勤講師としても活躍している。多くの若い人達を相手に教鞭をとっていると、おもしろいことに気づくという。
「たまにデザイン科以外の生徒達の作品を見たりすることもあるんですけど、彼らの方が意外にもいい作品をつくったりするんですよ。やはり枠にとらわれない自由な発想をするからでしょうね。」
自身にも言えることなのだそうだが、やはりデザインの仕事ばかりをしていると、保守的な発想へと流されがちになってしまう。常日頃、外的な刺激を受けて本来の自分を引き戻す作業が大切なのだという。

DTPの黎明期からデザインに携わってきた海津氏だが、今後もデジタル化が進むデザインの世界で、デザイナーはどのように対応していくべきかをたずねた。
「これまで、紙を電子化する方向で進化してきましたが、次の世代では電子化されたものをどれだけ忠実に印刷できるかが焦点になると思います。将来的にはブラウザがレイアウトソフトなみの表現力を持つでしょうし、携帯もそうなります。すると、これまでWebデザイン、グラフィックデザインと分けられていた垣根がなくなると思っています。」

海津氏は、やがてWebブラウザでもWYSIWYGの環境が整うだろうと予測している。Webデザイナーはフォントに気を使わなければなくなるだろうし、グラフィックデザイナーも学ばなければならないことが多くなるだろう。その中で、どれだけ自分を失わずに感性に忠実な作品作りをすることができるか。そこが大切なのだと語ってくれた。