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株式会社MetaMoJi

教育現場の課題を解決するDX
UDデジタル教科書体の
「手書きに近い字形」が
導入の決め手に

株式会社MetaMoJi
  • 株式会社MetaMoJi   法人事業部

    植松 繁 氏

先進的なIT技術をベースに、さまざまな業種の効率をあげるタブレット向けアプリケーションを手がける株式会社MetaMoJi(以下、MetaMoJi)。2020年、学校での使用を目的としたリアルタイム授業支援アプリ「MetaMoJi ClassRoom」にて、「UDデジタル教科書体」が導入された。モリサワフォントを導入した経緯、導入後の教育現場からの実際の反響などを、法人事業部の植松繁氏に伺った。

創業時から見通していた、タブレットが普及する未来

MetaMoJiは、2009年に設立された。当初はXML系(*1)の開発をメインとする予定だったというが、2010年3月、アメリカでApple社よりiPadが発表されると、創業者である現在の代表取締役社長 浮川和宣氏が、即座に大きく舵を切った。

「今後は間違いなく、タブレットの時代が来る」

PCではなく、iPadのように手書きで手早く書けることが好まれる時代になることを確信し、MetaMoJiは、タブレット端末向けの製品を中心に手掛けていくこととなる。タブレット端末専用アプリとしてまずリリースしたのは、iPad用手書きノートアプリ「7notes」だった。手書きがそのままテキストに変換できるという発想はすでにこの頃から採用されており、当時はDX(*2)を採用し始めていた大手の建設会社で導入され、使われていたという。そのことがきっかけとなり、続いて開発されたのは「eYACHO」という建設現場専用のアプリ。現場と管理者をつなぐ、双方向でのやりとりに重きを置いて開発された。そのインタラクティブな性能は当時はとても新しく、次第にそのアプリは認知度を高めていった。その後、教育現場からの「授業で使えるのでは」という問合せに応える形で、教育現場用の「MetaMoJi ClassRoom」、そして一般企業向けの「MetaMoJi Share for Business」がつくられた。いずれも、リリース以来多くの方に利用され、使う人の作業効率を格段に上げるノートアプリとして現在もダウンロード数を伸ばしている。

インタビューに応じる植松氏

「MetaMoJi ClassRoom」は、先生と生徒がリアルタイムで同じ画面を共有し、先生が生徒の画面を一括でコントロールできることが最大のポイントだ。従来の、教科書とノート、黒板や鉛筆だけを用いた授業では、どうしても勝手にページを進めてしまう生徒や、どこを説明しているかわからない生徒が出てきてしまう。ところが「MetaMoJi ClassRoom」を使えば、先生が見せたい箇所を自由にピンチイン、ピンチアウトしながら解説することができ、全員が同じポイントを見ながら授業を進めることができるのだ。

「とくに、説明をする時に指示語で済むのが簡単で便利だ、というお声を多くいただきます」と植松氏。たとえば英文中の“that”がどこを指しているのか、このグラフがどのデータを示しているのか、などといった説明が、同じ画面を共有していれば、「ここ」「これ」「この部分」といった指示語で的確に示すことができる。紙の教科書ではどうしても対応しきれなかった“おいてけぼり”の生徒を減らすことができ、かつ、授業時間の短縮ができるという、先生にも生徒にとっても大きなメリットとなっているようだ。

MetaMoJiが創業当時に予見した通り、いまや国からも「GIGAスクール構想(*3)」が提唱されている。多くの学校でタブレットが取り入れられる中で、より効率的な授業の進め方を求める現場の声は、確実に増えてきている。

MetaMoJiのアプリでは、手書きの文字をテキストに変換できる

教育現場にとって、教科書体は必須のフォント

植松氏が入社したのは2018年。前職でも教育系アプリの開発に携わり、それ以前には教科書の出版会社で営業をしてきた経歴を持つ。長年にわたり文教市場に携わってきた点を評価され、入社して早速、「MetaMoJi ClassRoom」の営業を任された。そこでまず、アプリ内のフォントのラインナップに目を留めた。教科書体が入っていなかったのだ。

「どのフォントでもいいから、とにかく教科書体を入れてほしい、と社長に直談判をしました。小学校教員の多くが国語の教員免許を持っていらっしゃいます。そうした先生方とお話しする時に、国語のことをどれだけわかっているかは、営業上とても大きなポイントになります。このアプリには、絶対に教科書体が入っていないとダメだと思いました」

その後、いくつかのメーカの書体を見比べながら検討され、結果モリサワのUDデジタル教科書体が選ばれた。「社長から、モリサワフォントの導入が決まったことを聞いた時は、それはもちろん当然だろうな、と思いました。私はモリサワフォントを選ぶべきだろうと思っていたんです」と植松氏は当時を振り返る。モリサワフォントの質の高さや読みやすさを、以前の勤務先にいる時から感じていたのだそうだ。

MetaMoJiがアプリ開発において最も重要視しているのは、その書き味だ。ノートや黒板に書いた時と同様に、タブレット上でもきれいに文字が書けること。ペンでタッチした時にポイントのズレがないか、線が手の動きにリアルタイムでついてくるか、といった、細かな感触を際限まで意識してつくられている。そうしたこだわりの中で採用された、モリサワのUDデジタル教科書体。一画ごとのハネやハライが自然で、手で書いた時の文字に近いところが最も評価されたのだという。

「MetaMoJiは創業当時から、すべての製品において、とにかく書き味をなんとかしようというこだわりが強いんです。そうした中で、手書きのように自然で手に馴染むモリサワのUDデジタル教科書体は、製品の書き味とあわせて、ユーザからの高評価につながっています」

実際に操作をしながらアプリの説明をする植松氏

UDデジタル教科書体が大きな強みに

植松氏はこれまで多くの現場を見ながら、「先生方が、子どもたちに文字を教えることをどれほど大切にしているか」ということを強く感じてきたのだという。一つのきっかけとして、「葛飾区」という地名を例に挙げた。古くから使われてきた「葛」という漢字が、ある一定の時期までコンピュータ上では正しく表示されなかったのだという。これは、コンピュータ上のJIS規格(*4)の問題であり、いわゆる「異体字」で表示されていたという経緯なのだが、このことが話題にあがった頃、植松氏は正しい文字の教育について考えさせられたのだそうだ。

子どもたちが正しく文字を書けるのか。また、文字の形を間違って覚えていないか。長年にわたり黒板とチョークを使って教えてきた先生方、とくに熱心な先生方からは、デジタル教科書そのものに対しての否定的な意見を聞くこともあった。

まず心配されることが多かったのは、「タブレットへの書き味が、ノートへの書き味に劣るのではないか」という問題。この点に関しては、MetaMoJiが長年培ってきたこだわりがある。実際に「MetaMoJi ClassRoom」を試した先生が「タブレットに書いたときの書き味が、紙に書いているようだ」と驚き、採用されたこともあるという。

次なる問題は、フォントの字形が手書きの文字と異なることだ。「比」や「北」のように、書体によって画数が変わってしまったり、「しんにょう」などのように、書体によって形が変わってしまう部首もあり、フォントのデザイン上の問題は確かにあった。実際に、「生徒が文字を間違えていても、『タブレットで見るとこういう形で書いてあった』と言われると指摘できない」という声も寄せられたという。しかし、UDデジタル教科書体なら、学習指導要領に準拠した字形でつくられているため、そういった問題をほぼクリアできる。また、筆書きの楷書ではなく硬筆やサインペンを意識し、手の動きを重視したデザイン設計がされているというのもUDデジタル教科書体の特徴の一つである。これが大きな決め手となり、これまでデジタル教科書に否定的だった自治体や先生方が「教科書体が入っているなら」と、導入を決めることもあるという。

手書きの文字に近い字形のUDデジタル教科書体は漢字学習にぴったりだ

植松氏は、「今では、UDデジタル教科書体が搭載されていることが大きな強みになっています。この書体が入っていることは必ず商談でもお話しますし、他メーカの営業さんが、『他には(UDデジタル教科書体が)ないけれど、MetaMoJiさんには入っていますよ』と紹介してくれたりもします」と、反響の大きさを語った。

そして、「MetaMoJi ClassRoom」は、障害者支援学習の現場でも広く導入されている。UDデジタル教科書体は、ロービジョン(弱視)、ディスレクシア(読み書き障害)に配慮されたデザインのため、文字の見え方に困難を抱えている子どもたちにとっても読みやすい形となっており、現場の先生方の話題に上がることも多いという。

「MetaMoJi ClassRoom」カタログ UDデジタル教科書体が導入の決め手になることもあるという

一度導入を決めるとほとんどの契約が継続されるというのもこの製品の大きな特徴の一つ。たとえば、ある学校では「特進コース」のような特定のクラスでのみ採用されていたが、授業の効率が上がることが評判となり、学校全体で導入されるようになった。2020年のコロナ禍においては、リモート授業が進む中で、「遠隔授業でも子どもたちが何をやっているか一人ひとり把握することができる」と評判になり、契約件数が飛躍的に伸びた。リモートによって授業の遅れを心配されていた先生方からは、「かえって授業が早く進んだ」という声も届いているという。

いつでも、どこでも、学習しやすい「MetaMoJi ClassRoom」は、まさにこれからの子どもたちに最適な学習支援アプリだ。

デジタル教科書の未来、教育現場の今後

現在、GIGAスクール構想の下に整備された教育現場において、一人一台ずつのタブレット端末が続々と子どもたちの手に渡り始めている。現場ではさまざまな試みが始まり、タブレット端末を使った授業はそこまで珍しいものではなくなってきた。一方で、インストールするソフトの選定やインターネット環境の整備など、これまで直面したことがない課題が露呈し、まだまだ試行錯誤を繰り返す自治体も多いというのが実状だ。教科書のあり方も、デジタル教科書のように時代に応じた進化が進みながら、各社製品の仕様の統一、検証が重要視されている。年々目まぐるしく変わる環境下で、どこまで“現場ファースト”でIoT(*5)の普及を進められるか。これには各社の取組みだけでなく、自治体や国との連携も、もちろん不可欠になってくるだろう。「私は、『MetaMoJi ClassRoom』の今後の展望は、国の指針がどう変わるかによると思っています」と植松氏は語る。多くの現場を目にし、そこに何が求められているかを的確に捉えてきた経験を踏まえ、業界全体を冷静に見つめている。

今後のフォント業界には、より多くの生徒たちが質の高い製品を使い、正しく学習を進められるように、あらゆる環境に柔軟に対応する姿勢が必要になってくるだろう。

最後に植松氏は、「『MetaMoJi ClassRoom』が、小学校から社会人になるまで、ずっと使っていけるデジタルノートであればいいなと思います」と、新しい時代を切り拓くツールとして、躍進を続ける自社製品への期待を込めた。

  • *1 XML(Extensible Markup Language)…Web制作におけるマークアップ言語の一種。タグと呼ばれる特殊な文字列を使用して、文章の構造や修飾情報を埋め込んでいくもの。
  • *2 DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)…進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のこと。
  • *3 GIGAスクール構想…全国の児童や生徒1人につき1台のコンピュータ端末の支給と、教育現場での高速ネットワークの整備を目指す文部科学省の取組み。2019年12月に提唱され、2020年から実施されている。
  • *4 JIS(Japanese Industrial Standards)…文字セットの公的規格の一つ。2004年に168字の例示字形が変更されるとともに、新たに10文字を追加したJIS X 0213:2004が策定された
  • *5 IoT(Internet of Things)…「モノのインターネット」と直訳される。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、家電製品や自動車などといったあらゆる製品(=モノ)自体をインターネットに接続し、より便利に活用するという試みを示す言葉。
  • ※掲載されている情報は2021年9月時点のものです