富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
社名変更に伴うリブランディングの取組み
富士フイルムグループとしての親和性や革新性からコーポレートフォントを採用
-
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
宣伝部 宣伝・ブランドマネジメントグループ グループ長山﨑江津子氏
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
1962年の創業以来、複合機やプリンターを核にビジネスシーンに革新をもたらしてきた「富士ゼロックス」が、2021年4月1日に「富士フイルムビジネスイノベーション」へと社名を変えた。富士フイルムグループとしてのリブランディングプロジェクトが推し進められ、コーポレートフォントとして「UD新ゴシリーズ」が採用された。
新ブランドにおけるフォントの位置づけなどを担当者に伺った。
創業以来となる一大ブランドチェンジ
2021年4月1日に始動した富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(以下、富士フイルムビジネスイノベーション)。創業以来となる一大ブランドチェンジは、経営企画・広報宣伝・デザイン部門を中心に入念な準備と円滑な浸透が図られた。
「社名とブランドが変わることを速やかに認知していただくコミュニケーションを強く意識した」と山﨑氏は話す。
「社名およびブランドが変わるだけでなく、ビジネスのテリトリーも日本とアジア・パシフィックからワールドワイドに変わります。富士フイルムグループとして一貫したイメージで競争力を高めていきたいという思いからリブランディングの準備を進めてきました」(山﨑氏)
デザインの志向も大きく変わることになる。以前は米国のデザインガイドラインを基本に、フォントは柔らかく親しみのある印象のオリジナルフォントを軸に、和文フォントを指定していた。「これらを富士フイルムグループのトーンに変えていくのが、大きなミッション」(山﨑氏)だったという。
ワールドワイドでの展開が選考ポイントに
新ブランドに求められる要素として、3つのフレーズを山﨑氏は挙げる。1つは「時代の先を行く先進性・革新性を表現できるトーン&マナー」、2つ目は「お客様から信頼が獲得できる一貫性」、そして3つ目が富士フイルムブランドの一翼を担うという意味で「親和性があり相乗効果が発揮できること」。いずれも富士フイルムビジネスイノベーションのビジネス領域でのブランド浸透を意図している。
コーポレートフォントの選考のポイントは「共通したイメージをワールドワイドで展開できること」(山﨑氏)。
「わかりやすくて読みやすいこと」「美しさがあること」「多言語展開でも統一感のある表現ができること」という3つの要素を重視。また、ディスプレイや印刷物といった異なるメディアでも違和感なく表現できることも条件に据えた。
そこで有力候補に上がったのがモリサワの「UD新ゴシリーズ」だった。
ユニバーサルデザインの視認性の高さはもとより、富士フイルムグループの公式ウェブサイトで既に採用されており、グループとしての統一感につながるとの思いもあったとのこと。モリサワ以外のフォントも候補に上がったが、グローバルで統一感を出せるフォントとしての拡張性も評価され、「UD新ゴシリーズ」が選ばれた。
「UD新ゴシリーズ」は太さや細さ、文字幅(コンデンス)といったバリエーションが豊富であることと、多言語展開用に「Clarimo UD PEシリーズ」が存在し、異なる言語での統一感ある表現が、使い勝手の面で現場のデザイナーからも支持されたという。
天地幅を変えず調整できオペレーションが効率的
コーポレートフォントの社内での用途は、マニュアル、商品パッケージ、公的文書などさまざま。中でも商品パッケージは、デザインフォーマットを作り、文字スペースを統一したとしても、商品によっては情報が多くなりスペースに文字が収まらなくなるケースもありうる。適切な文字幅に変えたコンデンス書体などのフォントを使い分けながら、スペーシングに配慮したデザインがしやすいとの利点も聞かれた。これが多言語併記となると配慮すべき点はさらに増える。例えば、同社のトナーパッケージは流通する地域により、さまざまな言語が存在する。「まったく同じデザインで多言語化する際、翻訳によって文字数が変わってしまうことはよくあります。加えて、法的な面からも記載すべき事項に違いが生じます。こうした際にもフォントのウエイトや文字幅を変えながら統一したイメージを守ることが叶います」(山﨑氏)
富士フイルムビジネスイノベーションではデザインを検討する際、文字要素について、見やすさを考慮したユニバーサル基準に則り、フォントの天地幅(高さ)を先に定めている。言語によっては商品名や見出しの横幅が違ってくるが、天地幅を変えずに調整できるため、オペレーションが効率的であることが利点だという。ちなみに、多言語での指定フォントは和文、簡体字、繁体字、ハングルが「UD新ゴシリーズ」。欧文、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ミャンマーは「Clarimo UD PEシリーズ」で切り分けている。
今後の国際展開に応じて、その他の言語の対応を検討していく方針だ。
前述のトナーパッケージに限らず、ロゴやデザインが変更される対象は多岐に渡る。複合機といったコア商品はもとより、取扱説明書や商品カタログ、用紙パッケージといった顧客に直接届くもののほか、同社の営業担当者が用いる名刺や紙袋、営業提案書のテンプレートなど幅広い。「全国の営業担当者が同じ世界観と高い品質で業務に取り組め、なおかつ2021年4月1日から混乱なく切り替えられるよう、社内イントラでの案内やFAQの作成などで準備を重ねてきました」(山﨑氏)
リブランディングイベントによる新ブランド周知活動
社名が富士フイルムビジネスイノベーションに変わった4月1日以降は、積極的にリブランディングについて社員への周知を進めた。4月と5月の2ヶ月で国内外を含め9割以上の社員が受講したeラーニングシステムを用いた勉強会では、マネジメントトップが社名変更の目的やブランド変更で取り組むべきことを語り、その上で、具体的なルールや留意事項を映像化して伝えた。さらには、社内向けリアルイベントとして、営業と開発の2つの拠点を会場に社内向けのデザインメッセを開催。新ブランドに係る商品デザインやパッケージ、カタログなどさまざまなアイテムを一堂に揃え、ブランド全体の統一感を見て感じ取ってもらった。
参加した社員からの評価も高く、ブランド切り替えのコンセプトが良く分かったとの声も上がった。
「社名変更以前より社員は、会社のブランドを守り指定の書式でドキュメントを作るというルールや文化が徹底されていた」(山﨑氏)そのため、今回のブランド変更でも積極的に理解に努める動きが目立ったようだ。
販売特約店や海外拠点へも新ブランドの説明会をオンラインで実施。
「コーポレートカラーも大きく変わり、ビジネストーンに合わせたブランド開発は社名と同様、ビジネスに革新を起こすものとして周りからの反応もとてもよく、スムーズにブランド変更が浸透していると感じています」(山﨑氏)
フォントを含め、デザインのトレンドは時代と共に変わると受け止めている。時流をキャッチアップし常に最適なフォント開発に気を遣う姿勢が、先進的な企業であることを対外的にアピールする上でも重要とのこと(山﨑氏)
「一貫性を持ったブランドとしてワールドワイドに輝いていく一助となるマネジメントやデザイン、そしてガバナンスは、私たちの部門の責務」とリブランディングの取組みを真摯に見つめる。
- ※掲載されている情報は2022年3月時点のものです