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横浜市交通局

“誰でも使え、誰もが見やすい”を念頭に
横浜駅東口のバス案内盤で
日英中韓のUDフォントを採用
Webフォントで遠隔からリアルタイム更新

横浜市交通局
  • 横浜市交通局総務部システム推進課

    和田朋徳氏

  • 折田匡志氏

  • 元木信広氏

1921年に開業した横浜市交通局は、最も身近な交通機関として、市民生活になくてはならない存在となっている。1日に約31万人が利用する横浜市営バスは、横浜駅やみなとみらい21地区をはじめ、横浜市内の広範囲をカバーし、市民だけでなく市外から訪れる人々の足としても利用されている。横浜市交通局は、利用者へわかりやすくバスを案内する目的で、2020年に横浜駅東口のバスターミナル総合案内盤とバス停標柱をリニューアル。より多くの人に見やすい表示の実現に向け、モリサワのユニバーサルデザイン(UD)フォントの「UD新ゴ」シリーズを画面表示に採用した。同局の担当者に、フォント導入の経緯や今後の取り組みなどを伺った。

横浜市交通局総務部システム推進課
(左)元木信広氏(右)折田匡志氏

バス停に接近表示機を設置して利便性を向上

横浜市交通局総務部システム推進課は、「バス」と「鉄道」のセクションがそれぞれのシステムを管理・運用している。バス部門のシステムは、運行管理や収入管理のほか、オープンデータやホームページ運用、サイネージなどの顧客ツール系のシステムなど多岐にわたる。

バス事業者による運行管理のシステム化は、1970年代以降に顕著になった交通渋滞問題を契機に進展する。渋滞により時刻通りのバス運行が困難となり、なかなかバスが来ないという乗客のストレスを解消するため、監督官庁の運輸省(現・国土交通省)はバス事業者に対し、バスの接近を知らせる「バスロケーションシステム」の開発を求めた。80年代に入り、バス事業者による同システムの運用が進んだ。

「横浜市交通局でもシステムを運用し、バス停にLEDを使った接近表示機を設置しました。当時は、バスに短波無線を搭載し、バスが接近してくるとバス停にある表示機が電波を受信してバスの接近を知らせる仕組みでした」と、横浜市交通局総務部システム推進課の和田朋徳氏は説明する。 

2005年(平成17年)ころ、GPS方式のバスロケーションシステムに移行。各バス停に個別のデータを送信して、リアルタイムのバス接近情報を提供できるようにした。時期を同じくして、「hamabus.jp」のドメインを取得し、パソコンや携帯電話で横浜市営バスのすべての系統の現在地が把握できるサービスを提供した。ホームページの1日のアクセスは、20~30万件におよび、横浜市トップページの月間70万件というアクセス数と比較しても多くの利用者がいることが伺える。

横浜市交通局経路時刻表検索サイトのバス接近情報画面

新サイネージは「UDフォント」や「多言語対応」を必須条件に

同局のバスロケーションシステムは、スタート当初、ソフトウェア開発会社と組んで運用を進め、成果を収めた。2015年(平成27)には利用者の利便性向上を目的に、公共交通機関のすべての乗り場を対象とした検索サービスを開発した会社と提携し、バスロケーションの情報発信に切り替えた。

「横浜駅東口には、元々、旧バスロケーションシステムで運用していたLED式表示の案内盤がありました。設備の更新に当たり、サイネージ運用を調査する中でWeb版の『ユニバーサルデザイン(UD)フォント』の存在を知りました。バス事業者は、障がい者の方々に対する乗降機会の促進に取り組んでおり、乗降の物理的課題の解決はもちろん、インターネット上での情報提供にも注力しています。横浜駅東口のサイネージリニューアルでは、“誰でも使え、誰もが見やすい”を念頭に、ユニバーサルデザインでリニューアルを進めることを決めました」と、同システム推進課の折田匡志氏は振り返る。発注仕様書には、「UDフォント」や「Webフォント」、「多言語対応」を必須条件とした。

リニューアルしたサイネージは、2020年4月1日に稼働した。横浜駅東口地下2階そごう入口前柱回りと地下1階の横浜駅東口定期券発売所前には、総合案内盤を設置。「乗り場別バス発車案内」と「方面別バス発車案内」に加え、乗り場案内や防災情報も発信することができる。

横浜駅東口定期券売所前の総合案内盤

さらに、地下1階の横浜駅東口定期券発売所の近くには、検索型の案内盤も設置した。タッチパネル式となっており、観光スポットをタッチすると、バスルートの検索ができるようになっている。パネル内には「画面を下げる」ボタンもあり、車いすの利用者にも使いやすい。

リニューアル当時、先進的な取り組みであることから自治体などの視察が相次ぎ、IT系の情報誌などでも紹介された。「世界標準の公共交通データフォーマットであるGTFS(General Transit Feed Specification)を利用したリアルタイムなバス運行・遅延情報をもとにした発車案内や、時刻表の電子化などが高い評価を受けたという。

検索型の案内盤(和文:UD新ゴNT、欧文:Clarimo UD PE)

Webフォント導入で遠隔地から運行情報を更新

地下2階と地下1階の総合案内盤では、バスターミナルに乗り入れる他のバス事業者や高速バスの運行状況をUDフォントでリアルタイム表示している。「インターネットとリンクしたシステムを導入することで、乗り入れている遠隔地のバス事業者さんも運休情報などの表示をリモートで逐次UDフォントで見やすく表示できるようになりました。バス利用者のみなさまへリアルタイムの情報提供を実現したのはもちろん、バス事業者の業務効率化にもつながっています。」(同システム推進課の元木信広氏)

さらに今回のリニューアルでは、横浜駅東口のりば(そごう横浜店1階)のバス停標柱も刷新した。標柱の上部には、行先観光地が表示されるほか、先発・次発のバス運行状況がリアルタイムで確認できる。タッチパネルでは、運行経路案内や時刻表、バス料金などの情報が閲覧可能となっている。運行経路案内をタッチすると、拡大された地図画面で表示され、バスの経路を視覚的に確認することができる。これらの情報は、日本語のほか、英語、中国語、韓国語でも案内が可能だ。いずれも統一されたデザインのUDフォントが採用されており、視認性が高い。

(使用フォント 和文:UD新ゴNT、ハングル:UD新ゴ ハングル、中文:UD新ゴ 簡体字)

2019年以降、横浜駅のデジタルサイネージと同時期に、街中のバス停の時刻表に記されたQRコードをスマートフォンで読み込むと、当該バス停のバス接近情報と混雑情報にアクセスできる機能も整備した。バスの利用者個々人が手軽にバスの位置情報を確認でき、混雑していないバスを選んで乗ることもできる。

高齢者から子供、今後の多国籍な観光客の需要まで、さまざまな人が利用するバスにとって、誰もが使いやすい仕組みや表示は欠かせない。UDフォントを使った横浜駅東口のバス案内表示は、バス利用者の快適な乗降をこれからもサポートしていくだろう。

  • ※横浜駅東口バスターミナルや連節バス専用停留所を除いた、一般路線用接近表示機は2023年1月末をもって完全終了します。
  • ※掲載されている情報は2023年1月時点のものです