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茨城県行方市

街への愛着と誇りを育てる
地域ブランディング
「行方市フォント」が
果たす役割とは

茨城県行方市
  • 茨城県行方市
    企画部 魅力発信課 シティプロモーショングループ
    課長補佐

    関野 健一氏

  • 主任

    藤田 彩海氏

2021年に茨城県行方市とモリサワは連携協力に関する包括協定を締結し、「伝わる」資料作りを目的とした職員研修などを通じて情報のユニバーサルデザイン化に取り組んできた。その一環として、同市が市制施行20周年を迎えるにあたり、制定フォントを選定する「行方市フォントプロジェクト」を実施。市の職員と小学生のワークショップ、中学生の投票を経て行方市フォントは2025年9月に決定した。本プロジェクトは日本の自治体における先進的な事例であり、市内外から高い関心が寄せられている。そこで同市の関野健一氏と藤田彩海氏に、プロジェクトの背景や市民と共にプロジェクトを進めた意図、今後の展望などについて話を伺った。 

(※制定フォント:企業や自治体の活動において、一貫した印象を保持するために管理・運用されるフォント)

「自然と調和するまち / 自然の豊かさと共存するまち」をテーマに選定した「解ミン 宙」が「行方市フォント」として制定

将来にわたって使い続けられる「市制施行20周年記念施策」を

藤田氏 行方市では「情報発信で日本一プロジェクト」を掲げ、これまでにさまざまな取り組みを重ねてきました。モリサワの「UDフォントの活用」や「伝わる資料作りのための研修受講」などもその一環です。そうしたなかで、市制施行20周年を迎えるにあたり、他にはない形で、将来にわたって使い続けられる施策を実施したいと考えました。 

市章のデザインマニュアル(暫定版)

例えば他の自治体では、周年記念ロゴやグッズの制作といった事例が多く見られます。しかし、行方市ならではの魅力を「フォント」という形で発信できれば、地域ブランディングにつながるのではないかと考え、行方市フォントプロジェクトを立ち上げました。背景には、行方市に愛着や誇りをもってもらえる取り組みにしたいという思いがありました。

 

関野氏 当市でも周年記念ロゴを制作した経験はありますが、一過性で終わってしまった反省があります。一方で、制定フォントは周年以降にも継続的な活用が可能です。また、日本の自治体における先進的な試みとして広報的な波及効果やシティプロモーションへの展開も期待できるのではないかと考えました。

 

とはいえ文字として、形として後世に残るため、承認プロセスにおいてはプロジェクトの意義を丁寧に説明しました。その結果、当時の市長や市議会から「独創的な取り組み」「若い世代を巻き込める」といった好意的な評価を得ることができました。

行方市フォント展開イメージ

藤田氏 また「行方市フォントプロジェクト」ではさまざまなメディアから取材を受け、想定以上のPR効果が生まれています。例えば、ワークショップの様子が茨城新聞に掲載されたり、フォント発表後には茨城放送のラジオ番組で紹介されたりと、県内外の方にも知っていただける機会となりました。さらに、他県の自治体からも視察依頼があり、関心の高さを感じています。

地域ブランディングは関係者と共に育てていくもの

藤田氏 本プロジェクトは地域ブランディングの一環であり、市の職員や子どもたち自身が「行方市らしさ」を考えるきっかけとして位置付けていました。そのため、三つのプロセスを設けました。まず職員向けワークショップを行い、行方市らしさを言語化しながら制定フォントの候補を検討しました。次の小学生向けワークショップでは、フォントの面白さに触れつつ、模擬投票を実施。そして最後に、中学生の投票で決定しました。

 

その過程では、ポジティブな意見だけではなく、ネガティブな意見も含めてさまざまな声が上がりました。しかしそれによって、行方市らしさを多面的に捉えることができ、大きな手応えを感じました。職員にとっては、じっくりと意見を交わす貴重な機会になったと思います。また小学生向けワークショップでは、候補書体のシールを使ったポストカードを制作し、素敵な作品が生まれました。参加者それぞれに、行方市に対する自分なりの思いがあることが伝わってきて、市の仕事に携わる者としてとても嬉しかったですね。

小学生ワークショップに参加した子どもたちの感想

関野氏 これまでも地域ブランディングとして、イベント出展などで特産品や観光地の魅力を発信してきました。しかし今回のプロジェクトを通じて、市民と一緒に行方市らしさを考えること自体が、インナープロモーションにつながるのだと実感しました。

 

加えて、地域ブランディングは完成形を提示するものではなく、関わる人たちと共有し、一緒に育てていくものなのだという気づきも得ることができました。今後はこうした視点から、行方市フォントをどのように活用していくのか。ブームで終わらせるのではなく、行方市のスタイルとして定着させていくことが重要だと考えています。

市への愛着や誇りにつながるプロセスを大切に

藤田氏 行方市フォントは、行方市らしさを考えることで市の魅力を再発見し、継続的な活用を通じて「シビックプライドの醸成」につながってほしいという思いから生まれています。そのため、小学生・中学生に「未来の市民代表」として参加してもらい、市民全体の納得感を得られるプロセスを大切にしました。

 

関野氏 「選ばれたフォント」ではなく「皆で決めたフォント」というストーリーを共有できたことが、このプロジェクトの大きな価値だと考えています。実際、職員や小学生・中学生のアンケートでも肯定的な声が多く、共感や納得感が得られたと思います。

藤田氏 子どもたちは将来、進学や就職で行方市を離れる可能性もあります。しかし、行方市フォントに選定されたモリサワの「解ミン 宙」は広く普及している書体なので、例えば街の中や本の中で目にすることがあります。そんなときにふと、「私たちが市制施行20周年記念に選んだフォントだ」と行方市を思い出すきっかけになってくれたらと期待しています。

 

関野氏 この先どこにいても、行方市フォントが故郷を想起させるものになるのであれば、小学生・中学生が選んだというプロセスは非常に意義深いものだと思います。

 

今後、行方市フォントの活用が広がって市民の目に触れる機会が増えると、より一層の親近感や愛着が生まれるのではないでしょうか。また、このプロジェクトが他の自治体やメディアに注目されれば、「行方市は先進的な取り組みをしている」という誇りにもつながるのではないかと考えています。

ノベルティにも「行方市フォント」を使用

職員の名札から観光スポットまで。行方市フォントを軸にした発信へ

藤田氏 行方市フォントの活用法として、身近なところでは職員の名札や名刺があります。また、市報の題字も行方市フォントに変更しました。そのほかにも、市勢要覧、市内イベントのチラシ、「二十歳のつどい」用のトートバッグなどにも広がっています。今後は、庁舎内のサイン、会見時のバックドロップ、市の公用車、市の封筒、案内看板など、多くの人の目に触れる場所に積極的に活用していく予定です。

 

また、行方市フォントにおける「行方市」「なめがた」「NAMEGATA」のロゴタイプも用意しています。例えば「方」の点は霞ヶ浦の水をイメージした形状に、ローマ字の「M」は筑波山を連想させる形状にカスタマイズするといった具合です。完成後の展開については、市長から「筑波山を望める霞ヶ浦沿いのサイクリングロードで、山とMの文字が重なる場所に看板を設置し、フォトスポットにしてはどうか」というアイデアも出ています。これまで行方市らしさが見えにくかった場所においても、視覚的にその魅力を感じてもらえたらと考えています。

関野氏 また近年では、シティプロモーションの一環としてフィルムコミッションにも力を入れています。映画やドラマのロケ地になることが増え、クレジットを見た市民からの反応が多いためです。そうしたところにも行方市フォントを活用することで、市への関心が高まり、関係人口の創出につながればと期待しています。

 

藤田氏 改めて、行方市フォントにこめられた行方市らしさは、「自然と調和するまち/自然の豊かさと共存するまち」です。私自身、市の魅力がしっかり表現できている書体だと感じていますし、市民からも「優しい雰囲気が合っている」「未来を見据えて支え合うイメージがある」などの感想が寄せられています。

 

関野氏 職員からも、シンボル的なフォントができたと喜ぶ声が上がっています。これまでは読みやすさへの配慮から UDフォントを選ぶことが多かったのですが、これからは「推しのフォント」として使用することができます。表現の幅が広がったと感じています。

 

自治体の名称は「市章+ゴシック体」が多いため、行方市フォントが明朝体ベースの書体であることも独自性につながっていると感じます。市章と一体的に使用することでより浸透しやすくなると思うので、ロゴの刷新なども含めて、行方市フォントを軸とした発信を広げていきたいですね。ただし、地域ブランディングは一朝一夕で成果が出るものではありません。だからこそ、市民と一緒に行方市フォントを育てていきたいと考えています。

  • 行方市フォントの取り組みにご関心をお持ちで、制定フォントをご検討の方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
  • ※掲載されている情報は2026年2月時点のものです