ピクシブ株式会社
グッズ制作Webサービス
「pixivFACTORY」における
フォント入れ替え戦略
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ピクシブ株式会社
Creator Division FACTORY Section
プロダクトマネージャ工藤 智祥氏
イラストやマンガ、小説作品の投稿プラットフォーム「pixiv」を中心に、さまざまなサービスを通じて世界中のクリエイターの創作活動を支援するピクシブ株式会社(以下ピクシブ)。同社が提供する「pixivFACTORY」は、スマートフォンでも簡単にオリジナルグッズが制作できるWebサービスとして人気を博している。当サービスは、デザインエディタに搭載されたフォントを入れ替えるプロジェクトを2025年から段階的に進め、およそ1年をかけて完遂。モリサワのデザインフォント15書体を導入した。
当サービスの狙いや、グッズをデザインする上で重要な役割を果たすフォント選定などについて、プロジェクトを先導したプロダクトマネージャの工藤氏に話を聞いた。
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2次元のイラストが立体的なグッズになって届く体験を提供
作品を発表するプラットフォームの普及、そしてSNSの浸透により、個人クリエイターの数は年々増加の一途をたどっている。そして、クリエイターとファンを中心に、自らが創作したコンテンツや関連グッズを販売し収益を得る「クリエイターエコノミー」と呼ばれる経済圏が形成され、その市場規模は2兆円を超える※1。
2010年代以降、ピクシブ株式会社は投稿プラットフォーム「pixiv」に続くクリエイター向けのサービス開発に注力。作品を売買できるマーケットプレイス「BOOTH」、ファンコミュニティ「pixivFANBOX」などが誕生した。なかでもオリジナルグッズを1個から作ることができる「pixivFACTORY」は、「推し活」ブームを追い風に、近年需要が急増している。作ったグッズはBOOTHで売ることもでき、オンデマンドサービスのため在庫を抱える必要もない。VTuberなどの配信者が、自らのアバターを利用した記念グッズの制作・販売を行うケースも増えているという。
pixivFACTORYの特徴は、PCやスマートフォンのブラウザ上で完結するWebサービスという点にある。「デザインテンプレートをダウンロードして、Adobe Illustratorで作成したイラストの完全データをメールで入稿して……といった、一般的なグッズ制作につきものの手間が一切ない」と、プロダクトマネージャの工藤氏が説明するように、同サービスは「誰もが簡単にグッズを作れる」気軽さに重きを置いている。
- ※1 「国内クリエイターエコノミーに関する調査結果」(一社)クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社による共同調査、2025
https://factory.pixiv.net/tips/first
「自分のイラストや好きなキャラクターが立体的なグッズになって届くのって、クリエイターやファンにとっては非常に嬉しい体験だと思います。サービスを提供する側として、グッズの材質やサイズなど、やろうと思えばいくらでもオプションを増やすことはできるし、高度な編集機能も搭載できます。ただ、pixivFACTORYではそういった専門知識がなくても楽しめるよう、あえて選択肢を絞り込んだシンプルなサービスデザインにしました」
移行プロジェクトでフォントラインナップを再構築。コストの最適化も実現
とはいえ、デザインエディタのツールは定期的にアップデートを図り、充実した機能を備えている。入力した文字をデザインに反映できる「テキスト入力機能」はそのひとつで、100スタイル以上のフォントを搭載していたが、「コスト面を含めてフォント環境を見直すこととなり、利用するフォントをすべて入れ替える決断をしました」。
こうした事情を背景に、サービスの品質・価値を維持しながら、pixivFACTORYの書体ラインナップを一新するプロジェクトがスタートした。「最初に迷ったのが、ゴシック体や明朝体といった定番書体と、デザイン書体のどちらにコストを割くか。よく、デザインに詳しい人ほど正統派の書体に重きを置く傾向があると言われていますが、ユーザーデータの分析結果を見ると一定数のユーザーにはそうしたこだわりがない。詳しくない人は派手な書体が充実してるほうがうれしいのだとすると、デザイン書体へコストを割り振るべきだと判断したのです」。
ピクシブが運営する「BOOTH」では、フォントを販売する個人クリエイターも多数存在するため、当初はBOOTHのクリエイターが制作したフォントのみで構成する案もあったという。しかし、デザイン書体は収録文字数が少ない傾向があったり、十分な書体バリエーションを確保するには個別に何人もと契約する必要があったりと、懸念点が浮上した。フォントベンダーを検討するなかで目に留まったのが、モリサワの新書体を紹介するサイトだった。「新書体を紹介するサイトのデザインに、近年の推し活的文脈を踏まえている印象がありました。アイドル風やお店のポップなど、用途や見せ方ありきで訴求されていて、使用時のイメージがつかめるようにデザインされていたのがよかったです」
そこで、イラストと相性のよい「カモレモン+」や「ボルクロイド」、マンガのふきだしで多用される「アンチックAN+」、筆文字系の「汐舟」などに加え、バリアブルフォント「DriveFlux※2」など、近年リリースされたものを中心に個性豊かな15書体を採用した。
- ※2 ウエイトや横画など4つの可変軸を調整できる和文書体。pixivFACTORYでは各軸の値を設定した7スタイルを採用
「これだけのバリエーションを漢字まで揃えた状態で提供できるのは、フォント専業メーカーのモリサワさんだからこそ。品質への信頼はもちろん、国内でサポートを受けられ、何かあった際にもすぐに相談できる安心感がありました」と工藤氏は話す。
また、pixivFACTORYではフォントをサブセット化※3して配信するサーバーを自社開発しているため、使用環境に合わせた形のライセンス契約を締結した。「当社の事情で特殊なライセンス契約にしていただきました。柔軟な対応がありがたかったです」と当時を振り返る。
最終的に、ゴシックや明朝などの定番和文書体と欧文書体の大半はオープンソースフォント(Google Fonts)、和文デザイン書体はモリサワ、丸ゴシックなど一部をクリエイター制作書体で構成。コストを最適化しつつ、よりユーザーニーズに即したラインアップとなった。
- ※3 サービスに必要な文字だけを抽出して表示させる技術
ユーザーの困りごとに寄り添い改善を重ねる
モリサワのデザイン書体を加えた2026年4月10日以降、モリサワフォントの多くが利用数ランキングの上位に入っているという。とりわけ“かわいい系”イラストとの親和性が高い「アルデオ」や「カモレモン+」、「すずむし」の利用率が高く、さまざまなグッズのデザインに活用されている。
またプロモーション活動に際しては、pixivFACTORYとモリサワがそれぞれSNS上でキャンペーンを展開し、共に新フォント導入の機運を盛り上げた。「契約を進めていく過程で、プロモーションも一緒にしたいですね、という話になり、モリサワさんからの提案でリリース日を4月10日『フォ(4)ント(10)の日』にしました。お互いに国内企業ということもあって相談がしやすく、ライセンス契約についても柔軟に対応してもらうことができました。“フォントを買ったら終わり”ではなく、こうした併走ができる関係性を築けたのはとてもよかったです」。
今後のpixivFACTORYのサービス展開について尋ねると「たとえ小さなことでも、ユーザーの困りごとにアプローチできる提案をしたい」という答えが返ってきた。
「文字に関することでいうと、まずは、絵文字や記号がメインのフォントは充実させる余地があると思っています。実際に、名前の一部を絵文字にしている配信者の方がいらっしゃいますし、クリエイターの多くがペンネームで活動することを考えれば、多彩なバリエーションを用意する必要が出てくるでしょうね。また基本図形だけでなく、スタンプのように使える装飾パーツ(デコ素材)の提供を始めました。こういうものを今後も増やして、デザインそのものをもっと簡単にしたいと思います。イラストを描くことと、イラストを使ってデザインすることは似て非なる作業なので、誰もが自分のイラストやキャラクターのグッズをすぐ作ることができる仕組みを更に追求していきたいです」。
ユーザーにとって何が最適で、何が必要か。その探求の先にあるのは「ものづくりの楽しさを伝えたい」という想いにほかならない。どこよりも使いやすいサービスの提供を目指して、pixivFACTORYの進化は続いていく。
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- ※掲載されている情報は2026年7月時点のものです































