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サポート終了間近!? フォントのフォーマットに注意

  

 

カテゴリ:文字・組版Adobe Creative Cloud

こんにちは、マツヲです。
夏休みシーズンもそろそろ終わりそうな今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
何事も始まりがあるものにはいつか終わりがありますが、実はフォントのフォーマット(形式)も、Adobe製品においてサポート終了を迎えようとしているものがあります。

サポート終了後は、アプリケーション側でフォントが認識されず表示されなくなってしまうことも……! 

 

フォントフォーマットを知ることは、印刷事故などのトラブル回避にもつながります。そこで、今回は「フォントのフォーマットって!?」というそもそものお話から、各フォントフォーマットの特長までご紹介していきます。

1. フォントフォーマットとは

電光掲示板やスマートフォン、家電製品など多くの場所でフォントが使われていますが、フォントはいくつかの種類に分類することができます。

 

よく使われているのは「アウトラインフォント」と「ビットマップフォント」の2つで、現在PCで表示するフォントのほとんどが「アウトラインフォント」です。

そして、アウトラインフォントの中でも「PostScriptフォント」もしくは「TrueTypeフォント」を元として、技術の発展と共にさまざまなフォントフォーマットが存在しています。

 

フォントフォーマットとは「フォントデータの内部的な作り」の違いを表しているんだな~という程度にお考えください!

2. Adobe製品でのサポート終了について

さまざまなフォントフォーマットがありますが、これからAdobe製品でのサポート終了を迎えるのは、欧文組版で古くから活用されてきた「Type1フォント」です。


2023年1月を以て、AdobeアプリケーションではType1フォントがサポートされなくなります。また、Photoshopについてはいち早くサポートが終了しており、現在最新のVer.23(2022)ではフォントメニューにもType1フォントが表示されなくなっています。

InDesignではVer.16(2021)から、Illustratorでは Ver.26.5(2022)から、Type1フォントを使用したファイルを開くと警告が出るようになっています。

 

・詳しくは「PostScript Type 1 フォントのサポート終了」をご覧ください。

・Photoshopについては「Type 1 フォントのサポート |サポート終了」をご覧ください。

 

サポート終了予定であることを踏まえると、新規で作成するデータにType1フォントを使うことは将来的に確実にリスクになるでしょう。今後も確実にお仕事を続けていくために、既存データに対してもOpenTypeフォントなどへ移行し、置き換えが必須です!

Illustratorの画面例
書式メニュー内「フォントの検索と置換」より、任意のフォントに置換することが可能です。

※フォント変更時の注意点※

フォントフォーマットが異なる場合、同名のフォント同士でも互換性は有りません。(当社のOCFフォントとNewCIDフォントは、PostScript名が同一でしたので、自動的に置き換わる場合がありました)
例えば、下記4つとも「リュウミン」というフォント名がついてますが、フォントを置き換えると体裁が崩れる・字形が変わるといった可能性があるためご注意ください。

・OCFフォント名 : L リュウミン L-KL
・New CIDフォント名 : A-CID リュウミン Pro L-KL
・OpenTypeフォント名 : A-OTF リュウミン Pro L-KL
・TrueTypeフォント名 : A-TTC リュウミン L

3. 各フォーマットの特長

サポート終了予定のType1フォントも含めて、各フォントフォーマット(①Type1フォント ②OCFフォント ③CIDフォント ④OpenTypeフォント ⑤TrueTypeフォント)紹介の前に、ざっくりと各フォーマットが誕生するまでの流れを見ていきます。

 

「OpenTypeフォント」という名前を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実はOpenTypeフォントと言っても2種類あります。

元となった技術次第で、一般的に言うところの「OpenTypeフォント(PostScriptベースのOpenTypeフォント)」と「TrueTypeフォント(TrueTypeベースのOpenTypeフォント)」と呼ばれています。

 今回のブログでも、OpenTypeフォントは「PostScriptベースのOpenTypeフォント」、TrueTypeフォントは「TrueTypeベースのOpenTypeフォント」を指しているとお考えください!

 

なお、「OpenTypeフォント」という同じ規格ではありますが、両者で線の描画方法が異なったり、機能の差別化も図られています。

おおよそOpenTypeフォント(PostScriptベースのOpenTypeフォント)の方が、さまざまな機能を搭載しているケースが多いです。

 

フォントフォーマットについて、なんとなくイメージできてきましたか?
ここからはサポート終了しているフォントフォーマットも含めて、各フォーマットの特長など、もう少し掘り下げてご紹介していきます。

 

下記クリックしていただくと、現在主流のフォントフォーマットまで一気にスクロールして読み進めることもできます☆

OpenTypeフォント
TrueTypeフォント 

①Type1フォント

Type1フォントは1984年にリリースされ、上記にあるようにAdobe製品で2023年1月にサポート終了することがアナウンスされているフォーマットです。

 

256文字(1バイト分:8bit=2の8乗=256文字)を格納できるため、欧文フォントとして広く利用されていました。
ただ、現在では非推奨のフォーマットとなり、代わりにOpenTypeフォントが使用されるようになってきています。身近なところでは、Microsoft OfficeはすでにType1に対応していません。また、macOSでもすでに非推奨のフォントになっています。

ちなみに、モリサワではごく一部の製品を除き、欧文Type1フォントはご提供しておらず、モリサワフォントでの影響はないものと考えて差し支えありません。

 

Apple社のサイトを見ると、レガシーのフォント形式は非推奨であることがわかります。 

②OCFフォント

OCFフォントは最初の日本語PostScriptフォントで、主に初期の日本語DTPで使われていました。しかし、現在はサポートが終了し、使用されていないフォーマットです。

先述のType1フォントは文字数の多い日本語を収録することができませんでしたが、OCFフォントはType1フォントを複数組み合わせた構成で出来上がっています。そのため、日本語も表現できるようになったというわけです!

 

Mac OS X以降では使用することができなかったり、PDFへ埋め込みができないなど制約があり、後に誕生するCIDフォント・OpenTypeフォントへ移行されていきます。

OCFフォント プリンタフォント製品パッケージ例
当社からは1992年6月~2000年2月まで販売しており、今と違ってフロッピーディスクでのご提供でした……!

③CID(NewCID)フォント

OCFフォントはType1フォントを組み合わせて便宜的に2バイトにしていましたが、CIDフォントは最初から2バイトで設計されたフォントです。しかし、現在はサポートが終了し、当社でもすでに提供終了しているフォントフォーマットです。

 

フォントファイルの構成としては、文字のアウトラインファイルと、文字セットと各文字に振られた番号(CID)を結びつけるCMapファイルというシンプルなものになっています!

CMapファイルによって、様々な文字コード環境からでも同じようにフォントを呼び出して利用できるようになりました。

NewCIDフォントって?

ご存知の方がいるかもしれませんが、当時モリサワからは「NewCIDフォント」という名前でCIDフォントをご提供しておりました。

なぜ「New」が付いているのか、これには訳がありまして……。

 

当初は「New」は付けずに発売を始めたのですが、機能的に改良が行われることになりました。

そして、改良版として発売する際、元々発売していたCIDフォントと区別をつけるために「新しいCIDフォント=NewCIDフォント」と呼ぶことに!

 

※NewCIDフォントは2020年3月末にサポートが終了しているため、新しいPCへインストールすることはできません。

Adobe製品においてもCIDフォントは、2019年以降にリリースされている製品にてサポート終了となっています。

④OpenTypeフォント

ここで言うところのOpenTypeフォントは「PostScriptベース」のOpenTypeフォントで、現在DTPの現場で主流のフォントフォーマットです。
使用するアプリケーションによっては、異体字の切り替えや文字詰めの微調整など高度な組版を行うことも可能です。

Illustratorの画面例
OpenTypeフォントは、OpenTypeパネルからさまざまな設定が可能など、機能が充実しています。(フォントによって、搭載している機能に差があります)

例えば「みちくさ」というフォントでは、連綿体(筆でつなげて書いたような形)としての表示をIllustratorやInDesignのOpenTypeパネルから呼び出すことも可能です。

また、OpenTypeフォントは収録している文字数次第で、複数の規格(文字セット)による区別がつくようになっています。

書籍の本文など多くの漢字を扱うことが予想される場合は、なるべく収録文字数が多い規格のフォントを使うことで文字化け防止にも繋がります!

・詳しくは「OpenTypeにも種類があるのですか?」「フォントの表記名、読み解いていきます~!」をご覧ください。

⑤TrueTypeフォント

①~④はPostScriptベースのフォントフォーマットでしたが、こちらは「TrueTypeベース」のフォントフォーマットです。
当社のフォントとしては「MORISAWA BIZ+」に搭載しているフォントや、フォント名に「A-TTC」と付いているものなどが該当します。

 

TrueTypeフォントはOpenTypeフォントと比べると、組版関係の機能や収録している文字数が少ないものが多く見受けられます。しかし、報告書の作成といったビジネス資料の作成などでは、十分に活躍してくれます!

モリサワから提供しているTrueTypeフォントの一例

Office製品などでビジネス資料作成を行う際は「TrueTypeフォント」、Adobe製品などDTP系アプリケーションで利用するのであれば「OpenTypeフォント」と、アプリケーションや目的に合わせた使い分けをオススメします!

フォントはデザインによる違いだけではなく、内部的なデータの作りにも細かな違いがあるということがお分かりいただけましたでしょうか?


繰り返しとなりますが、Type1フォントはサポート終了間近です。

Type1フォントをご利用中のユーザー様は、複雑な組版も可能なOpenTypeフォントなどへ、フォント環境の移行をお急ぎください!

 

それでは、また次回の更新もお楽しみに~☆

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