フォントの表記名、読み解いていきます~!
この記事は「モリサワ note」にてリニューアル公開されています。
カテゴリ:文字・組版、Adobe Creative Cloud
こんにちは、マツヲです。先日、2021年秋リリースの新書体のお知らせがありましたね!私個人としても、リリース日が今から待ち遠しいです~!
毎年新しいフォントが出てくるのは嬉しいですが、パソコンにフォントをたくさん入れていると、フォント一覧で「名前が同じものが複数並んでいる……!?」と思った方もいるのではないでしょうか。
名は体を表すと言うように、フォントの名前はもちろん、フォントの名前の前後についているアルファベット達にも意味があります。フォントの表記名の見方を知っていると、フォントを選ぶ時の参考になることも……!
今回は弊社からご提供しているフォントを例に、フォントの表記名を読み解いていきます。
はじめに
Illustratorなどでフォントを選択する際、フォントの表記名はこのように表示されます。
複数のパーツ(「A-OTF」や「Pr6」など)で構成されており、それぞれフォントの仕様などを表しています。各パーツごとにどのような情報を表しているのか、これからご説明していきます!
1.フォントの名前
まずはフォントの表記名のメイン!ズバリそのものフォントの名前については、「A-OTF」「A P-OTF」等の次にくる部分が該当します。フォントのデザイン名を表している箇所ですね!
「はるひ学園」など、ユニークな名前がついているものもあります。
今回はフォントの表記名の見方に関するご紹介記事のため、名前の由来については割愛しますが「書体見聞第五回はるひ学園」や「note:レトロ可愛い赤のアリスが生まれ変わった話。」では名前の由来についてもご紹介していますので、併せてご覧ください♪
フォントの名前の後に「KL」「KS」「KO」「NT」と付いている場合がありますが、これは「かな」に関するものです。(例えば……A-OTF リュウミン Pro L-「KL」、A-OTF リュウミン Std L-「KS」、A-OTF UD新ゴ「NT」 Pr6 など)
・KL…大がな(かなが大きめ)
・KS…小がな(かなが小さめ)
・KO…オールドがな(活字書体のデザインを生かし、縦長のプロポーショナルの文字が多い)
・NT…ネオツデイをベースにしたかなを使用
「書体見聞第四回リュウミンのかな」でも、「かな」についてご紹介しているので、併せてご覧ください♪
ちなみに……
「筆順」と付いているフォントは、書き順に沿ったストロークごとに一文字として文字を書いていく過程を収録しているフォントです。
2.フォントの表記名の最初についてるアルファベット
これは、メーカーの区別やフォントのファイル形式を表しています。 頭に「A-OTF」「A P-OTF」がついていたら、「モリサワのフォントなんだな~」と思ってください!
AP版はペアカーニング情報を搭載している他、一部グリフのデザイン調整を行っています。
そのため、「A-OTF」と「A P-OTF」は、後に続くフォントの名前が同じだとしても、異なるフォントとしての扱いとなり互換性がないのでご注意ください!(例えば……「A-OTF UD新ゴ Pr6N」と「A P-OTF UD新ゴ Pr6N」など)
書体の各仕様について、もっと詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
ちなみに……
「A-OTF」などの後に「UD」と書いてあるフォントは、ユニバーサルデザインに配慮したデザインであるUDフォントを表しています。フォントを探すときに「UDに配慮されているフォントを使用したいかどうか」というところでも絞り込むことができますね!
3.フォントの名前の後:文字セット
フォントの名前の後に付いているアルファベット達は、文字セットを表しています。
文字セットとはフォントが持っている(収録している)文字数を表しています。フォントの名前が同じものでも、文字セットが異なる場合があるのでご注意ください!
書籍の本文など様々な漢字を使用するときは、なるべく収録文字数が多い文字セットのフォントを選択することをオススメします!
対応言語の広い欧文書体では「PE」等の文字セットで表記しています。詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
4.文字セットの後に付いているアルファベット
■Nフォント
文字セットの後に「N」がついているフォントは「Nフォント」「N付フォント」と呼ばれています。(例えば……「A-OTF リュウミン Pr6N」「A P-OTF 剣閃 StdN B」など)
Nフォントとそうでないフォントは、キーボードなどで文字入力した時点で最初に表示される字形が異なります。
パソコンの画面表示の進化などの兼ね合いもあり、時代によって基本となる字形が異なっておりました。
基本となる字形はJISで定められており、「JIS90」と「JIS2004」のどちらの字形を最初の文字入力時に採用するかを「フォント名のNの有無」で区別ができるということです!
ちなみに……
2019年10月24日以降にリリースしたAP版の新書体のうち、ProN, Pr5N, Pr6Nは縦組み用と横組み用の令和合字(㋿)を収録しています。そのため、各文字セットにおいて上記表より2つ文字数が多くなります。また、StdNでは、横組みの合字を収録しているため1つ文字数が多くなります。
■ウエイト
末尾に付いているアルファベット(「L」「H」など)はウエイトを表しています。
ウエイトの表記は下記のようなものがあります。
L→Light R→Regular M→Medium B→Bold EB→Extra Bold H→Heavy EH→Extra Heavy U→Ultra
W1~9→大きい数字のものほど太いウエイト
ちなみに……
ウエイトを段階的に変えて作られた書体のグループを「ファミリー」と言います。「黎ミン」というフォントは2012年に世界で最も文字数の多い書体ファミリー(ファミリー合計783972文字!)に認定されています!
ファミリーが豊富な書体は、見出しや本文など要素ごとにウエイトを微調整できるので便利ですよね~。
Adobe製品の文字パネルでは「Pr6」「UD」など入力するとフォントを絞り込めるので、今回の内容が皆様のフォント選びの一助となれば幸いです!
文字パネルでは任意のフォントをお気に入りとして登録しておくこともできるので、フォントを探すときの手間を少しでも短縮して制作時間を確保していきましょう~!
それではまた次回の更新をおたのしみに♪♪